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海街diary

録画しておいた、是枝裕和監督の映画「海街diary」を見た。

評判に違わず、実にいい映画である。

何気ない日常をみずみずしく切り取り、よけいな説明的セリフがない、というのが、是枝監督の映画の特徴だと思うが、私は逆に、よけいな説明的映像がないところに、強く惹かれる。

たとえば、広瀬すず演じる、四女のすずが、同級生の風太たちと花火大会に行く場面。

花火の映像は映し出されず、花火を見るすずの表情だけを映し出す。

それだけで、この花火大会が感動的だということが十分に伝わるのである。

これがふつうの映画だったら、空に花火が上がっているカットを入れ込むだろうな。でもそれでは台無しである。

あるいは、風吹ジュン演じる海猫食堂の店主・二ノ宮幸子がなくなり、葬式がおこなわれた場面。

お葬式の会場を出た四姉妹と、リリー・フランキー演じる「山猫亭」の店主・福田仙一が言葉を交わす。仙一は幸子の友人で、ひそかに好意を寄せていた。

「いい葬式や。いい人生やったね」と、山猫亭の店主。

「写真の二ノ宮さん、とてもいい顔してましたね。あれ、福田さんが撮ったんでしょう?」

「うん、最後のデートのときのね」

もちろんこの時、二ノ宮幸子の遺影がインサートされることはない。もしそういう演出をしたら、それこそ台無しというものである。

この映画にはよけいな説明的セリフがないのと同様、よけいな説明的映像もない。セリフの代わりに映像に語らせ、映像の代わりにセリフで表現している。

この絶妙なバランスこそが、是枝監督の映画の真骨頂である。

絶妙なバランスといえば、この映画にみえる人間関係の距離感もまた、絶妙である。とくに、幸と椎名、佳乃と坂下、千佳と浜田、すずと風太、幸子と仙一の関係は、凡百の映画では短絡に描いてしまうところだろうが、この映画ではそこを「寸止め」にし、そのことによりかえってリアルに描くことに成功している。

あと、四姉妹の物語ということでいえば、向田邦子「阿修羅のごとく」をどうしても連想してしまう。父と娘との関係、四姉妹それぞれの抱えている事情、そして男がみんな情けなく描かれているところなど、いくつもの共通点が見いだせる。

これらが、是枝監督の作家性によるものなのか、それとも原作者の吉田秋生によるものなのか。原作も読まねばならない。

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