名調子
名調子、ということで思い出したのが、NHKラジオで放送していた「にっぽんのメロディー」である。進行役は、中西龍だった。
中西龍は知ってるよね?フジテレビの時代劇「鬼平犯科帳」でナレーションをやっていた人である。
その中西龍が、NHKのアナウンサー時代に、ラジオで毎日、「にっぽんのメロディー」という10分番組(だったと思う)を担当していたのである。私は小学生のころ、この番組をよく聴いていた。
「歌に思い出が寄りそい、思い出に歌は語りかけ、そのようにして歳月は静かに流れてゆきます。みなさまこんばんは。お心豊かにご無事な毎日でしょうか。にっぽんのメロディーです」
童謡「赤とんぼ」のテーマ曲をバックに、中西が毎回必ずする挨拶である。
「この時間は、森繁久弥さんの曲を2曲放送いたします」
投稿者からのおはがきを紹介し、リクエストされた「懐かしい歌」を2曲ほどかける。
エンディングで再び童謡「赤とんぼ」のメロディーが流れはじめる。その曲をバックに、毎回必ず、季節の俳句を紹介し、その俳句を情感こめて解説していた。
「たてつかれ 教師は悲し 暖炉燃ゆ 木村蕪城
『先生の考え方はね、僕から言わせると古すぎるんですよ』
『そういうけどねえ君。君だって今に先生の年齢になれば、世の中というものはそういう君の考え通りにはいかないということが、わかるようになるんだよ』
『大人っていうのはですねえ。すぐ、何かといえばそういう言い方をするでしょう?僕はそこら辺がいちじるしく気に入らないんですよ』
…などという会話が、教師と生徒との間にあったのでしょうか。
その口論の傍らで、ストーブはあかあかと燃えています。
たてつかれ 教師は悲し 暖炉燃ゆ
おやすみなさい」
この語り口は、いま思い出しても、しびれるほど素晴らしかった。
いろいろな語り手の「名調子」を集めてみたいものである。
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