回転寿司にご用心
こちらに引っ越して間もないころのこと。
家から歩いてすぐのところに回転寿司屋があった。「ネタ」に自信があるという回転寿司屋である。
文字通りベルトコンベアに乗ったお寿司が広い店内をまわっていて、その中で、何人かの職人さんたちがお寿司を握っていた。ベルトコンベアに沿って客が座るカウンターがあった。その一部は、4~6人掛けのボックス席になっていた。
ま、よくある回転寿司屋さんである
カウンターでお寿司を食べていると、私から見て正面がボックス席になっていて、そこで小さな子どもを連れた家族が座って、お寿司を食べている。
これも、よくある風景。
だがこの風景こそが、私がもっとも嫌悪する風景なのである。
回転寿司のボックス席に座る家族は決まって、小さな子どもを、お寿司がまわっているベルトコンベア側に座らせている。
例外なく、そうである。
そこでどんな問題が起こるかというと、小さな子どもは、まわってくるお寿司に、汚ったねえ手でベタベタと触りやがる。
そして、その皿をスルーするのである。
そしてその小さな子どもが汚ったねえ手でベタベタと触りやがった寿司が、こちらにまわってくるのだ。
さらに悪いことに、大人たちは、小さな子どものいたずらに、まったく注意を払っていない。つまり子どもをほったらかしにして、自分たちが食べることに一生懸命になっているのである。
どうして、小さな子どもが汚ったねえ手でベタベタと寿司に触っていることに、連れてきた大人たちは罪の意識を感じないのだろうか?
どうして、小さな子どもを、お寿司がまわっているベルトコンベア側に座らせるのだろうか?
ちょっと考えれば、わかりそうなものである。
しかし例外なく、小さな子どもを連れてきた大人たちは、子どもをお寿司にいちばん近いベルトコンベア側に座らせる上に、彼らをほったらかし続けるのである。
この光景を見るたびに、私は殺意を覚えていた。
この日もそうだった。正面のボックス席に座っている小さな子どもが、イスの上に立ち上がって、まわっている寿司にいまにも汚ったねえ手で触りそうな勢いである。家族たちは、そのことにまったく気づく様子もなく、寿司を食べている。
その様子をじっと観察していた私は、
(おいおい!)
と思って、店員さんに注意しようとした。
その瞬間、信じられないことが起こった。
寿司を握っていた職人さんが、私の視線に気がついたのか、まるで私の視線をふさぐように、私と、その小さな子どものあいだに立ちはだかったのである。
そしてあろうことか、私に話しかけてきたのだ。
「いやあ、中国人留学生ってのは、意外とまじめですねえ。うちの店でもアルバイトで使っているんですがね。仕事を早く覚えようとするし、礼儀正しいんだ、これが」
何でそんな話を、このタイミングで私にしてくるのか?関係ないやん!
その職人さんは、私からその小さな子どもが見えないように、つまり死角になるように立ちはだかって、延々と関係ない話を始めたのである。
しかし気になるのは、小さな子どもの動向である。こうしているうちにも、汚ったねえ手で寿司をベタベタ触っている恐れがあるのだ。
気になって視線を横にずらしたりすると、それに合わせて職人さんも、右に左にと不自然な動きをして、なんとか私から小さい子どもが見えないようにしている。まるで反復横跳びのように。
何なんだ、この仕打ちは!!!???
どう考えても、クレーム封じとしか思えない。クレームを言いそうな客の前に立ちはだかって、話をそらそうという作戦なのである。
しかし注意すべきは、小さい子どもをベルトコンベア側に座らせる家族のほうなのではないだろうか?
すっかりお寿司を食べる気がしなくなり、早々とその回転寿司屋を後にした。
もう二度とこの回転寿司屋に来るもんか!と決意した。もちろん、いまもその店には行っていない。
今度は食欲旺盛な4歳の姪をこの店に連れてきて、ベルトコンベア側に座らせて復讐しようか、とよっぽど思ったが、お金をかけてまでそんなことをするのはバカらしいと思い、こんな店とはかかわらないほうが無難だと思い直した。
このお店の目を通るたびに、この時のことを思い出すのだ。
小学生以下の子は、回転寿司のベルトコンベア側に座ってはいけない、という法律を作ってくれませんかねえ。
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コメント
心が疲れたらお粥を食べなさい。
http://www.gentosha.jp/category/shoyoyoshimura1410
NHK「いただきます お寺でごはん」の粥の回も動画検索してご覧いただけると、心が静まります。
ちなみに、拙僧も今朝は炊飯器でお粥を炊きました。
ふるさと増税の返礼品のお米が、なかかなか届かないので、米不足になっているだけですが。
合掌。
投稿: 永平寺こぶぎ | 2016年6月10日 (金) 06時49分