学位論文
韓国では、学位論文、いわゆる博士論文が合格すると、それを大量に印刷、製本して、お世話になった人や、同じ専門分野の人に配る、という風習がある。
学位論文は、全部が全部、出版社がついて出版されるというわけではない。だから、書いた本人が、おそらく「町の印刷屋さん」に発注して、印刷、製本してもらうのだと思う。
黒いハードカバーの表紙もあれば、ソフトカバーのものもある。また、博士論文だけでなく、修士論文(韓国では「碩士論文」という)を製本して配布する人もいる。
私も、何人もの韓国の方から、学位論文や碩士論文をいただいた。はじめてお会いした方からも、何度となくいただいた。いわば名刺代わりなのである。
日本ではどうかというと、私の知るかぎり、そのような風習は見受けられない。
「おかげさまで、学位論文が合格しました。おまけに就職も決まりました!」
「それはおめでとう」
というやりとりがあったとしても、
「はて、この人はどんな内容の学位論文を書いたのだろう?」
と、内容がまったくわからないことがほとんどである。
内容がわからないから、おかげさまで、と言われても、どこがどう、おかげさまで、なのか、よくわからない。だからその人についての興味もわいてこない。
日本でも、「学位論文を名刺代わりに配る風習」があればいいのにな、と、時々思うことがある。
学位論文に限らない。修士論文や、卒業論文でもよい。
名刺代わりに配ってくれたら、その人の人となりが、よくわかるのではないだろうか、と思うことがある。
少なくとも、肩書きしか書かれていない名刺よりは、その人のことがよくわかると思う。
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コメント
一昨日から旅の空です。
いわゆる同業者祭りに来ているのですが、名刺代わりにレジュメをもらった。
さて、「授業を英語で教えるには」という企画に大勢の人。
なんでも英語で教えよという、お上のお達しで困っている人が多いよう。
こうなると一層困るのがそちらの業界でしょう。
ウッド・イージーとか、ドロップ・ライティングとか、早く定訳を決めておかないと。
そうしてしばらく経ってから、また学会企画になるんだ。
どうやって日本語で教えるのかってね。
でもクイズはもちろん、この閑静な学院を当てるのではなく、日程を縫って訪れた吹きだまり聖地でございます。
はやく答えないと、台風が来ちゃうぞ。
投稿: タートル(こぶぎ) | 2016年9月19日 (月) 06時18分
ヒントがわからないので答えを決め打ちしますぞ。
プラハ出身の作家の名前が店名の喫茶店!
投稿: onigawaragonzou | 2016年9月19日 (月) 11時27分
「カフェ屋襲撃」
カフェ屋襲撃の話を友達から聞いたことが正しい選択であったのかどうか、僕にはいまもって確信が持てない。たぶんそれは正しいとか正しくないとかいう基準では推しはかることのできない問題だったのだろう。つまり世の中には正しい結果をもたらす正しくない選択もあるし、正しくない結果をもたらす正しい選択もあるということだ。
その店は、駅からアーケードを三つ抜けて角を二つ曲がった古刹の近くにあった。
「いらっしゃーい」
とある漫才師に似た面影のある若い主人は一人きりで、室内なのに麦藁のハットをかぶっている。外観と違ってダークブラウン基調のアジアン・テイストの店内には、リカーの並んだカウンターと何脚かのテーブル、その奥にはソファーが置いてあり、ガラス戸の右壁手前には本棚が見え、入り口近くの白壁にはミュージシャンのサインが鉛筆でなぐり書きされていた。
客は僕一人。スムース・ジャズのBGMが静かに流れるだけの店内に女性客が一人入ってきたが、閉店まで30分と主人が告げるとメニューを3分間だけ見て出て行った。
主人は無口なようで、注文の後は何も話すことがなかった。その主人が厨房に引っ込むと、僕はこの雰囲気に逆にいたたまれなくなって、夜なのになぜか注文できたランチを平らげると、そそくさと席を立った。
このままでは何も強奪できない。支払いの間際に、意を決して主人に尋ねた。
「この店に鬼瓦さんという方が、いらっしゃいましたか」
「すいません。存じ上げませんが」
僕は愛想笑いをしてその場を取り繕い、店を出ると駅近くの明石焼き屋に向かった。
投稿: 村上こぶぎ | 2016年9月19日 (月) 23時22分
「カフェ屋再襲撃」
そのカフェは古都の繁華街にあったが、大通りからほんの少し入ったところに入り口があるので、駅から歩いていくと、通り過ぎて振り返らなければ分からない。
吹きだまりオフ会で「マスターがルパン三世にそっくりの店」だと薦めてみたものの、この街に来ると暇があればカフェばかりに入り浸っているくせに、それっきり行ったそぶりもないので、コメント欄の方から率先して襲撃して、ふきだまり聖地に列することにした。
地下へ階段を降りると、入ってすぐ正面に3席ほどのカウンターがあり、ほどなく先客の珈琲を淹れ終わったルパンが手書きのメニューを持ってきた。
10歩も歩けば突き当たるような狭い店内には、手前の壁に沿って、赤ビロウドの四角いイスと猫の額ほどの小さいテーブルが並ぶ。四人がけのテーブル席も1つあるようだが、黄土色のマホガニーと赤いビロウドの色調で飾られた店内は、古い客船のキャビンのようだ。
とにかくとても狭い。
ルパンはすらりと背が高い30代くらいの男性で、確かに髪型をかっちり固めて、もみ上げも伸ばしているが、赤いジャケットを着ているわけでもなければ、声もルパンと違う。
当たり前か。それに関西弁やし。
スペシャルブレンドを注文した。この地では砂糖をたっぷり入れたミルクコーヒーにあうように、酸味の強い珈琲を出す店が多いが、確かに酸味はあるがブラックでもミルクでもいける美味い珈琲を出してきた。
目の前のカウンター席には中年男女の先客が座っていてルパンと話しこんでいたが、とにかく店が狭くて話している内容がよく聞こえるので、タブレットをいじるフリをして、聞き耳を立てた。
さすが関西生まれのルパンは聞き上手で、合いの手を打ったり質問したりと、客の話をうまく聞き出している。
まるで、昔、FM東京で放送していた「アバンティ」そのものじゃないか。
聞き耳を立てていると、どうも大学の先生が大変だという話らしく、こういう店にはなかなか来ない、休みの日も学会で出かけて潰れるし、先生とか先輩後輩のつながりで就職が決まってしまうと、ルパンが話している。
よっぽど話に割って入ろうかと思ったが、思いとどまる。
親しそうな話ぶりからカウンター客はご常連かと思ったが、ルパンが話題を変え、横の奥さんらしき人が海外遠征するほど和太鼓の達人であるというネタを聞き出していたので、一見さんの観光客と分かった。
こうして、狭くて薄い穴倉のような純喫茶で、次はいつ来るとも知れないお客を迎えては、珈琲一杯分のおしゃべりをして送り出す、という繰り返しを、ルパンは生涯続けていくのだろう。
などと感慨にふけっていると、カウンター客が席を立った。
こうなると狭い店内に客は僕一人。ルパンの次の標的にされたら、今度は聞き耳を立てる側から立てられる側になってしまう。
慌てて残りの珈琲を飲み干すと、カウンター客の後を追うようにして店を出た。
投稿: 村上こぶぎ | 2016年9月22日 (木) 10時36分
こぶきさん、アバンテイ、唯一大人になつてからも聞いてたラジオでした。なぜかあの時間車で動いてる時が多くて。いろいろなゲスト面白かったなー。ちよつと前に終わったような?
投稿: | 2016年9月22日 (木) 11時59分
そう、土曜のアバンティと日曜の安部礼司は、なぜか車に乗っていることが多くて、つい聞いてしまうのです。
今では「ピートのふしぎなガレージ」という、同じようなインタビュー・ベースの後番組をやっていますが、やはり「聞き耳を立てる」という設定がよろしかったようで。
http://www.tfm.co.jp/garage/
投稿: スタンこぶぎ | 2016年9月22日 (木) 22時58分