ソッコク酒の屈辱
10月22日(土)
1週間の旅が終わった。
今回の旅で痛感したのは、韓国語がどんどん下手になっているなあということである。
何より「ソッコク酒」が正確に聞き取れなかったのがショックだった。
おじいちゃんのDさんの発音を聞いて、完全に「석걱주」であると思い込んでいたが、正解は「소곡주」だったのである。
このていどの聞き取りを間違うなんて、韓国語の「イロハのイ」を理解していないことに等しい。まったく情けない。
今回は、韓国語のわからない職人さんが安心して仕事をできるための通訳としての役割もあった。もちろんそれ自体は特に支障がなかったのだが、それ以外の、たとえば食事をするときなど、韓国人とのコミュニケーションがなかなかうまくいかなかった。
職人さんのうちの一人が、なんとか場を盛り上げようとしていろいろな話を披露しようとするのだが、話の内容が込み入りすぎて、韓国語に訳せない。
「辛いものが苦手なのですか?」という韓国の方の質問に、
「子どものころ、凍傷になりかけたことがあって、軟膏を塗ってもらったんですが、その軟膏の中に唐辛子の粉が入っていたみたいで、ひぃぃぃ~、となって、さらにかぶれたんです。お医者さんに行ったら、『凍傷のせいなのか、軟膏に入っている唐辛子のせいなのか、ようわからへん』と言われるくらいひどくなって、それ以来、どうも唐辛子が苦手なようです」
…そんなもん、訳せるか!!!
「通訳できません」
と、泣く泣く弁明する始末である。まったく、屈辱的である。
思い返してみれば、過去にも似たような人や、それ以上の強者が何人かいた。とても通訳するのが難しいような込み入った話や、ごく限られた人たちにしかわからないような話をするのである。前者はまだしも、後者になると、困ってしまう。
本人はしたり顔でそのエピソードを披露しているのだが、こちらとしては、相手にどう通訳していいのかわからない。
難しい表現ならば易しく言い換えれば済む話なのだが、背景がわかっていないと意味がわからないぞ、という話を、さも面白いかのように話されると、辟易する。
ごく一部の人には伝わったとしても、その話の背景を知らない人にとっては、何のこっちゃわからない、という話は、考えてみれば、通訳する以前に、そもそも伝わりにくい話なのだ。
韓国語でコミュニケーションをとっているとき、聞き取りやすい人とそうでない人の差が歴然としているというのも、そういうことに起因するのだろう。
韓国語を勉強してわかったことは、
「どんな言語も、伝わりやすい話し方と、伝わりにくい話し方があり、その違いは歴然としている」
という真理である。
最近のコメント