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ささやかな抵抗

いまから20年近く前の話。

A先生とB先生は、ともに飛ぶ鳥落とす勢いの、まさに脂ののりきった二人である。

二人は全国各地のさまざまな会合で一緒になり、会合が終わると、グルメな二人は地元の美味しいお酒と肴に舌鼓を打ちながら、お互いの忙しさを自慢し合った。

「どうも忙しくってねえ。頭の中で次から次へと構想が浮かんでくるのだが、原稿が書きたくても書けない。2カ月ほど時間をくれたら、頭の中の構想を全部書くのになあ」

「俺なんか2カ月なんて贅沢は言わないよ。2週間でもくれたら、頭の中の構想を全部原稿に書いてやるのになあ」

そして二人はガハハと笑った、という。

いま思えば

(飲んでる暇があったら、その時間を使って原稿を書けばいいのに)

と思うのだが、当時はその話をくり返し聞かされるたびに、、

(すごいお二人だなあ)

と感嘆したものだった。

さて、そういうお二人に対して、世間はいつまでたっても落ち着いて原稿を書く暇を与えることはなく、いまもバリバリと第一線で活躍し続けておられる。

いまの私が置かれている状況を考えると、「2週間でも時間をくれれば、頭の中に浮かぶ構想が書けるのに」という気持ちは、最近少しわかるような気がしてきた。

ただその言葉を、酒の席で、忙しさを誇るようなニュアンスでは、決して言いたくない。

それは、その二人の先生に対する、私なりのささやかな抵抗である。

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