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筒井康隆の「不謹慎」には、なぜ拍手喝采できるのか?

10月4日(火)

妻が筒井康隆のトークショーを聴きに行った。

インタビュアーが、小説の真意を性善説的に解釈していくのに対し、筒井康隆がそれをことごとく否定していくさまがじつに痛快だったという。

その筒井康隆が、トークショーの終盤で、突然、壇上で体調の異変を訴えた。

客席から見ていても、明らかに顔色が悪くなり、体が震えだすのがわかるほどだったという。

大丈夫か?と、みんなが固唾をのんで見守っていると、筒井康隆が言った。

「私、煙草を吸わないと死にますので…」

そう言うと、煙草に火をつけて、吸い始めたのである。

それを見て、みんなが大爆笑した。もちろん妻も、大爆笑。

その話を聞いた私も、大爆笑した。

なぜ、みんなが大爆笑したのか?

それは、その会場が、ある超有名な建築家が設計した建物だったからである。

その超有名な建築家は、その建物を建てる際に、さまざまな注文をつけたという。

建物の中は、絶対禁煙にすること、壁にポスターやチラシなどを絶対に貼ってはならないこと、などである。

禁煙はともかく、使う側からしてみたら、いろいろな制約を設けられてしまうことは、窮屈な話ではある。

建物の使い勝手よりも、デザインを重視した、ということだろうか。

建築家の意向により厳格な制約が定められた建物の中で、筒井康隆が平然と煙草を吸い始めたことに、人々はある種の痛快さを感じ、大爆笑したのである。

実際、筒井康隆の「偽文士日録」には、そのときのことについて、こう書いてある。

「…途中、どうしても喫いたくなり、全面禁煙の館内の舞台上で「私煙草喫わないと死にますので」などと言いながら一本出して火をつけたら、皆、大笑い。さすがに「やめろ」と言う人は誰もいなかった。ほんの三服か四服喫っただけで携帯灰皿に入れる。ここで煙草を喫ったのは後にも先にもおれひとりだ」

それにしても、不思議である。

妻も私も嫌煙家で、差別や偏見が大嫌いなのにもかかわらず、筒井康隆の言動には、いつもなぜか大笑いして拍手喝采してしまう。

なぜ、筒井康隆の「不謹慎」な言動には、拍手喝采してしまうのだろう?

まことにもって、謎である。

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