シン・ゴジラの話をもう少し
「シン・ゴジラ」は奥が深すぎて語るのもなかなか憚られるのだが。
ゴジラの誕生を予言した孤高の科学者・牧五郎は、映画のなかでは登場しないのだが、一瞬だけ、顔写真が映る。その顔写真が、岡本喜八監督である。
これも有名な話らしいが、庵野監督は岡本喜八監督をリスペクトしているという。そう言われてみると、「日本のいちばん長い日」と「激動の昭和史 沖縄決戦」の要素が入っていることは、映画を見ればわかる。
興味深いのは、総理大臣の描き方だ。
最初に登場する総理大臣(大杉漣)は、どちらかというと「日本沈没」の総理大臣(丹波哲郎)のイメージに近い。
御用学者のレクチャーを受ける場面や、ヘリコプターに乗って避難する場面などは、「日本沈没」に類似の場面があり、「日本沈没」に登場する総理大臣像を彷彿とさせる。
だが、大杉扮する総理は、あっさりとゴジラに殺されてしまう。
で、総理臨時代理に就任したのが、閣僚の中で生き残った農林大臣(平泉成)。
派閥の順送り人事で大臣になったという老獪な政治家で、有能なのか無能なのか、腹で何を考えているのか、わからない。
この面倒な難局に誰も引き受け手がなく、みんなに押しつけられた形で、総理臨時代理になった。
で、のらりくらりと難局をのりきり、事態が収拾した後、内閣が総辞職する。
このあたりの展開は、「日本のいちばん長い日」の鈴木貫太郎総理(笠智衆)をかなり意識している描き方である。
「シン・ゴジラ」はかつての東宝映画へのオマージュにもなっているのだ。
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コメント
医者の薬を飲んでも咳が引かず、頭痛もして仕事にならないので、映画を見ることにした。
そんな状態だからか、コメントを書く段になって、肝心の名前を思い出すことができない。
たぶん「転校生」のようでもあり、「イルマーレ」のようでもあり、「猟奇的な彼女」の地下鉄すれ違いシーンのようでもあり、「ビューティー・インサイド」のようでも、「私達結婚しました」の初期名シーンである「アルシン(アレックスとシネ)カップルの南山階段」のようでもあったが、すべて夢だったかもしれない。
たぶん、これを初めて見た若者は、上に挙げた映画を最初に見た時の感動を、この映画で一度に味わったのであろう。
だから、上に挙げた映画を再度見返すとよかったように、この映画も登場人物の行く末を知った後で、再び見返すとよいかもしれない。
確かに彗星の描写は美しく、そして残酷であった。
が、ロマンチック・コメディーを見散らかしたおじさんには、遠い日の花火を俯瞰から傍観することしかできなかった。
でも、この映画が生まれるまでに、沢山の名前も知れない映画と赤い糸で結ばれていたのであろうし、それを確認するだけでよかったのかもしれない。
それにしても、東京の風景描写がきれいすぎる。それはヒロインの心象描写なのであるが、
久しぶりに訪れてみて、随分と煤けた街になったと思ったばかりだったので、そうやって過去は美しく思い返されるものになるのかもしれない。
そうやって、覚えていることは段々忘れていって、ますます名前が思い出せなくなるだろう。
この映画の名は。
投稿: こぶぎ巻き | 2016年10月12日 (水) 23時53分
これはクイズなのか?いや、答えはあちこちに出ているから、これはクイズ風に装った「詩」なのだろう。
だいたい「こぶぎ巻き」という時点で、年代を感じるね。
投稿: onigawaragonzou | 2016年10月13日 (木) 00時36分