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犬笛授業

最近ブログの更新が滞っているのは、火中の栗を拾うような仕事ばかりしていて、心を折らずに生きることで精一杯だからである。

自分のことを棚に上げて言うのだが、この業界には厄介な人や因習が多く、その中でバカなふりをして生きていくのは、相当しんどい。

そんな中、先週金曜日(11月11日)、久しぶりに学生たちの前で授業をする機会があった。

うちの職場の同僚たちの中には、都内の大学で、週に1度、非常勤講師をするという人が多いのだが、私は依頼があってもずっと断っていた。

その理由は、忙しくてその余裕がないということと、もう1つは、「都内の私大生は恐い」という都市伝説めいた話を、半ば信じていたからである。

前の職場、前の前の職場で学生たちに恵まれていた私にとって、

「都内の私大では学級崩壊みたいなことが起きている」

みたいな話を聞くと、恐くて授業なんかできないなあと思ったのである。

今回、都内の超有名私大の、面識のない先生から依頼が来た。

「オムニバス授業なので、2回ほど授業をしてください。専門の学科の2年生80名くらいが受講する授業です」

と言われ、2回だけなら負担も軽いし、専門の学生が受講するなら多少マニアックな話をしても理解してくれるだろうと思い、お引き受けすることにしたのである。

当日。

恥ずかしながら、その都内の超有名な大学に生まれて初めて足を踏み入れた。

ビックリした。

JRの駅の目の前にあるではないか!

この路線はじつによく使う路線なのだが、この駅で降りることなんぞ、めったにないことだった。なので、この大学がこんな有名な駅の目の前に立地しているなんて、今の今まで知らなかったのである。

少し早めに着き、今回のオムニバス授業を仕切る先生とお話をした。いわく、

「最近の学生は、授業なんてまじめに聴きませんから」

という。

「いえ、なかには熱心な学生はいますよ。前のほうに座っている学生は授業をよく聴いています。でも、後ろのほうに座っている学生は、全然ダメです」

「そうですか…」

やはり都市伝説は本当だったのか?

しかし若干気になったのは、その先生が少し上から目線で話されていたことである。

そういう方からすれば、学生はそういうふうに映るのではないだろうか?

さて授業のほうは、学級崩壊することもなく、1回目が無事に終わった。90分、いつもの調子で喋った。

オムニバス授業を仕切る先生も、一緒に授業を聴いておられたのだが、

「やっぱり後ろのほうで座っている学生は全然ダメでしたね。寝てるやつもいましたし」

という。どんな授業でも寝ている学生はつきものなので、私は全然気にならなかった。それに、教室のいちばん後ろで居眠りをしているその先生の姿を私は見逃さなかった。

私は常々思うのだが。

私の話すことや書くことには、犬笛のようなもので、届く人と届かない人がいる。

ある人には届くが、別の人にはまったく響かない。

今までそんな経験を何度もしてきたのである。

授業のあとのリアクションペーパーが送られてきたが、学生たちの反応もまずまずである。ということは、犬笛が聞こえたということか?

いちばん後ろに座っていた先生には、犬笛が聞こえただろうか?

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