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喫茶店難民

1月12日(木)

仕事で「前の勤務地」を訪れる。

私が来る前は雪がなかったのに、私が来てから大雪が降り始めたという。

「雪を連れてきましたね」とからかわれた。

会議が終わり、卒業生のT君と会った。この日はたまたま、週末の仕事の振替休日だという。

「どこかでお茶でも飲みながら話をするか」

「そうですね」

「この近くにあるだろうか?」

「そういえば近くの公共施設の一角に、喫茶店があったと思います」

「ああ、たしかそうだね」

その公共施設に行ってみたが、どうもそんな気配がない。

受付の人に聞いてみた。

「今日は喫茶店は開いてますか?」

「すみません。喫茶店はもう営業をやめてしまったのです」

「そうでしたか」

たしかに、以前からお客さんのほとんどいない喫茶店だったからなあ、しかたがない。

「どこか近くに、喫茶店のようなところがありますか?」

「さあ…。たしか、通りのはす向かいのビルの中にあったと思います」

「ビルですか?」

「ほら、ここから見えるでしょう」

そう言うと、受付の人はそのビルを指さした」

「ああ、あそこですね。わかりました」

雪道を歩いて、そのビルに向かう。

オフィスが集まっているビルのようである。

「コーヒーの看板がありますね」

「ビルに入ってみよう」

中は清潔な感じだが、ひっそりとしていた。

「本当に喫茶店なんかあるんだろうか?」

「レストランがあるみたいですよ」

壁に「レストラン→」と書いた貼り紙があった。

矢印の方向に歩いて行くと、はたしてレストランがあった。

しかし入口には、

「本日の営業は終了しました」

という札がぶら下がっていた。

「おいおい、まだ4時だぞ。もう閉まったのか」

「どうしましょう」

町の中心部といってもよいところなのに、喫茶店がどんどん廃れていく町なのだ!

「仕方がない。自販機で缶コーヒーを買って、座れるところを探そう」

ということで、缶コーヒーを飲みながらしばらく話した。

「先生の連載、まるで授業を聴いているようです」

「同じことをほかの卒業生にも言われたよ。授業で扱った内容も書いているからね」

みたいな話を1時間ばかりした。

T君も私も、次の約束があったので1時間ほどで解散した。

「またお目にかかります」

「今度はゆっくり飲もう」

ビルを出ると、すでにあたりは暗く、雪は前よりも強く降っていた。

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