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成田空港彷徨

1月27日(金)

さて、東京駅から北へ向かう新幹線に乗った私は、1時間20分ほどかけて「新幹線の各駅停車しかとまらない駅」で降りた。

午後、この町で3時間ほど仕事をして、夕方4時51分発の新幹線で東京方面に戻る。

新幹線と私鉄を乗り継いで向かった先は、成田空港である。

明日から2日間、うちの職場で小さなイベントがあり、韓国からひとり、お客さんを招いたのである。

そのお客さんが成田空港に到着するのが午後9時だという。その方は日本語がわからない方なので、私が空港まで迎えに行くことになったのである。

ただし、初めてお会いする方なので顔がわからない。仕方がないので、「歓迎!○○先生」とハングルで書いたプラカードを作って待つことにした。

午後9時過ぎ、飛行機が到着した頃を見計らって、到着ロビーのところでプラカードを持って立っていると、ジーン・ハックマンみたいなおじさんが私に英語で話しかけてきた。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、あんた、英語わかるか?」

見栄を張って、「ええ、少しなら」と答えてしまった。

「ずっとここで待っているんだが、誰も出てこない。ここで待っているのは正しいことなのか?」

みたいなことを、どうやら言ってるようである。いや、もっと複雑な話をしているようにも聞こえる。

すると、ジーン・ハックマンみたいなおじさんは、私にEチケットのような紙を見せて、

「これなんだが…どうかね、合ってるかね?」

みたいなことをさらに聞いてくる。

しかしその紙を見ても、当然英語で書かれているので、何が何だか全然わからない。

「すみません。わかりません」

私がそう言うと、ジーン・ハックマンは、困ったような顔をして離れていった。

ジーン・ハックマンはなすすべがないようで、到着ロビーのところをウロウロとするばかりである。

到着ロビーを見渡しても、グランドスタッフが見当たらないので、聞こうにも聞けないのかもしれない。

しばらくすると、到着の出口から、客室乗務員らしき女性が出てきた。

私は意を決して話しかけた。

「あのう…」

「何でしょう?」

「あちらの方が、困っておられるようですよ」

私は、到着ロビーをあてもなくウロウロしているジーン・ハックマンを指さした。

「○○のお客様でしょうか?」

○○、とは航空会社の名前である。

「さあ、わかりません」

「私どもは、他の会社のことはわかりません。グランドスタッフにお聞きください」

そんなことわかってるわ!こちとら、つい先日、映画「ハッピーフライト」を見たばかりなんだぞ!航空業界の内部事情くらいわかるわ!俺だってグランドスタッフが近くにいればそっちに聞くさ!でもいないから、こうして聞いたんじゃないか!

…という言葉をグッと飲み込んで、

「とりあえず、話だけでも聞いてあげてください」

と粘った。

仕方ない、といった様子で、某航空会社の客室乗務員が流暢な英語でジーン・ハックマンと話し始めた。するとどこからか、グランドスタッフの人が駆け寄ってきた。

あ!映画「ハッピーフライト」でいうところの田畑智子だ!

「どうかしましたか?」

田畑智子が、ジーン:ハックマンに英語で話しかけた。

それを見て某航空会社の客室乗務員も安心し、あとは任せたわね、てな感じで去って行った。

よかった、これで解決だ。俺もいいことをしたなあ。

…と思いきや、全然そんなことはなかった。

ジーン・ハックマンがさかんに田畑智子にいろいろ聞いているのだが、どうも解決策が見当たらないようなのである。

田畑智子もタブレット端末を使っていろいろと調べたり、携帯電話かPHSみたいなものであちこちに連絡を取っているようなのだが、どうも埒があかないようなのだ。

結局、ジーン・ハックマンに加えて、田畑智子まで到着ロビーをウロウロとしはじめたぞ!

ジーン・ハックマンの投げかけた質問が、あまりにも難解なものだったに違いない。

なにしろ、グランドスタッフが解決できないんだから。

ジーン・ハックマンと田畑智子は、あっちへウロウロ、こっちへウロウロとしている。

私はといえば、韓国からのお客さんが出てくるのを待っているのだが、つい、視線がその2人のほうにいってしまう。

かれこれ40分ほど経過したが、ジーン・ハックマンと田畑智子は、まだウロウロしている。

(グランドスタッフが解決できないほど難しい問題って、いったい何があったんだ?)

と思っていたら、ジーン・ハックマンと田畑智子は、到着ロビーから外へ出てしまった。

(どこへ行ったんだろう?)

と思っていたところに、韓国からのお客さんが到着口から出てきた。

「こんにちは」

「よくいらっしゃいました」

こうして私は、無事にお客さんをお迎えすることができたのだが、はたしてジーン・ハックマンは、どうなってしまったのだろうか?

無事に解決することを祈るばかりである。

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