自意識過剰の肩すかし
2月26日(日)
この2日間は、新幹線と在来線を乗り継いで2時間以上かかる町で、「同業者祭り」だった。
酒豪揃いなので、懇親会が体力的にはいちばんつらい。
まあそれはともかく。
2日目の朝、会場に行くと、この日の午後におこなわれる総合討論で司会をされる先生が私にお話しされた。
「総合討論のところで、○○の話題についてフリますので、コメントを発言してください」
私は驚いた。なぜならこのときのテーマが、とてもマニアックなテーマだったからである。私にはコメントなどとてもできない話題だった。
「滅相もないことです!その話題だったら、××さんが適任じゃないですか」
そう答えると、
「いや、××さんには別の話題でコメントいただこうと思っていますので、どうか一つ、よろしくお願いいたします」
「はぁ」
朝9時半。いよいよ「同業者祭り」の2日目が始まった。
マニアな人たちが100人以上も参加している。
(こんなところで、マニアでない俺がうかつにコメントなんてできないよなぁ…)
しかし頼まれてしまったことは仕方がない。イベントが始まったのもそっちのけで、必死にコメントを考えることにした。
幸い、ノートパソコンをもってきていたので、過去に自分が書いた原稿をひっくり返して、
(何か無理やりにでもコメントに引きつけられるネタはないだろうか…)
と探し出す。
スマホも駆使して、インターネットでいろいろと調べもした。
そうやって調べながら、コメントで言うべきネタをノートにどんどん書き込んでいった。
(これならば、人前でコメントを言ったとしても大丈夫だろう…)
と、ひとまず準備が整ったのが、総合討論が始まる5分前、午後2時のことである。
2時5分から総合討論が始まった。
討論を聞いていて、あることに気づいた。
(どうやら司会者の方は、あらかじめたくさんの方にコメントをお願いしているようだ…)
司会者の方は、会場の方に次々にコメントを求めていた。司会者の方に指名された方は立ち上がって、だいたい一人5分程度ずつ話をする。それを受けて壇上のパネラーが5分ていど話をする。
そんなこんなでもう45分が経過した。
ちなみに討論時間は1時間である。
(おかしいな…。俺がまかされた話題に全然たどり着かないぞ)
…と思っていたら、終了間際に、司会者の方が、私がまかされた話題をとりあげた。
「では、○○という話題につきまして…」
(来た!)
「…××さん、コメントをお願いします」
ええええぇぇぇっ!!!
××さんは、実に的確なコメントをされた。
そりゃそうだ。××さんは、○○の話題についての専門家だもん。
…しかし、俺が午前中から必死になっていたことは、いったい何だったんだ…?
ひょっとして、私が勘違いしたのかも知れない。朝、司会者の方にコメントを頼まれたとき、
「その話題だったら、××さんが適任じゃないですか」
と私が言ったことで、司会者の方は私が断ったものと解されたのだろう。
しかし私は、その依頼がまだ「生きている」と思い込み、まるで自分が指名されると思って、バッカみたいに必死になってコメントを考えていたのである。
なんという自意識過剰であろうか!
久々に軽く死にたくなった。
急に恥ずかしくなり、「同業者祭り」が終わるや否や、脱兎のごとく会場をあとにしたのはいうまでもない。
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