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冷や水は冷たくなかった

3月3日(金)

合宿2日目。

今朝も8時半から分科会である。

昨日と同様、とても偉い先生による、テーマとは関係のない話が延々と続く。

昨日からうすうす感じていることだが、この会は、テーマを無視して、喋りたいことを喋りたいだけ喋らせることをよしとしているようだ。

この会が異種格闘技戦と銘打つなら、ルールを決めて、そのルールの上でテーマに沿ったディベートをさせるとかすればいいのに、そういう発想はないらしい。

さながら、研究資金獲得のプレゼン大会の様相を呈してきた。

さすが、私のようなしがない文系とは文化が違う。

そうこうしているうちに、分科会の時間があと30分になってしまった。

偉い先生は短いコメントをしますといいつつ、パワポを使って1時間半もしゃべり続けたのである。

1コマ分の医学の講義をたっぷりと受けた。ありがたいことである。

しかし、これをどんなふうにまとめるのだろう?

この2日間の最後に、3つの分科会が集まって、それぞれ分科会でどんな建設的な意見が出されたかを座長がとりまとめなければならないのだが、うちの分科会では昨日来、延々と関係のない動物の事例報告ばかりがおこなわれて、肝心のテーマについてはなにひとつ話し合われていないのだ。

座長はこれをどうまとめるのだろう。他人事ながら心配になってきた。

残り30分で、座長もさすがに焦ったらしく、

「では、全体討論に入ります。この先、このテーマに関してどのようなシーズ発掘が期待できるでしょうか」

とお題を投げかけた。

昨日からダンマリを決め込んでいた私は、何か言わないと、新幹線で1時間以上もかけてここまでやってきた甲斐がないなあと思い、発言することにした。

「とても興味深い発表でございました」と前置きした上で、

「ジェンダーを考えるということは、われわれ自身の『語り』の問題を考えることでもあると思います。過去の出来事や目の前で動物が行動していることなど、ある事象を説明するときに、その語り口が、私たちがいま生きているジェンダー規範にとらわれていないかどうかを、たえず検証する必要があるのです。

たとえば、魚の行動について大変興味深くお話しを聞きましたが、その中で、求愛とか、三角関係とか、一夫多妻とか、嫉妬とか、勝ち負けとか、そういった言葉で説明されました。ある意味ではとてもわかりやすいのですが、ただその『語り』は、あくまでもいまの私たちのジェンダー規範の中で説明されている可能性があり、実はその事象がまったく別の意味をもっている可能性もあるのです。

今回の異種格闘技戦で、ともにこのテーマで手を取り合うことがとても難しいことがわかりましたが、ただ、唯一協業の可能性があるとしたら、私たちの『語り』の部分を相互に検証し合うことではないか、と思います。その点であれば、私たちは同じ土俵に立つことができるように思います。

ジェンダーを考えるとは、そういうことではないでしょうか」

ま、私としては、冷や水をぶっかけたわけですな。

「その通り」と偉い先生が言った。

「たしかに動物の行動を擬人化することはよくない」と言って、動物の行動を擬人化することがなぜよくないかを延々と説明しはじめた。

…また論点がずれてきちゃったな。

…私が言いたかったことは、そういうことではなかったんだがな。

結局、その偉い先生にミスリードされて、私のいったことが雲散霧消してしまったのである。

さて、最後の全体集会。

うちの分科会の座長さんが、2日間の議論を苦労してまとめられた。

「動物の行動を擬人化して説明するのはよくないという意見が出されまして、もっと動物の気持ちになって考える必要があると…」

…もはや、何だかわからない。

私は、噛んで含めるように発言したつもりだったが、それが曲解され流布されるという過程を目の当たりにすることができたという点で、この2日間はいい勉強になった。

自分の表現力不足をのろうばかりである。

新幹線で東京に戻り、夕方、今度は連載の編集者と打ち合わせである。

「先生のお書きになるテーマはマニアックすぎて一般読者には難しいので、少し一般読者にとりつきやすいテーマを書いてくれませんか」

と、方針転換をやんわりとせまられた。

「わかりました」

やはり、私の表現力では、人に伝わらないということらしい。

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