人間の証明
4月2日(日)
テレビ朝日で「人間の証明」をドラマ化するというので、見てみた。
棟居刑事を藤原竜也が、八杉恭子を鈴木京香が演じていた。
2時間強の尺に強引にまとめてしまったため、展開が早すぎたのと、登場人物にまったく共感できなかった。
いちばんの問題は、1970年代という時代性が、まったく描けていなかったことである。
たとえば1978年版のTBSドラマ「人間の証明」では、主人公の棟居刑事が、強烈な嫌米感情を持っている。
70年代の刑事ドラマを見ていると、GIに対する嫌悪を露骨に表現しているものがある。以前にも書いた、「Gメン75」の、沖縄を舞台にした回などもその例である。
この国の誇りや人間性を奪う記号的存在として、GIが暴力的に描かれていたのである。
たぶんこの憎悪の感情は、今の時代の多くの人々には封印されてしまった感情であろう。
しかし70年代はこうした感情を表明することに抵抗がなかった社会だったという点は、認識しておく必要がある。
映像化された「人間の証明」評については、こことここに書いたことがあり、今もその考えが変わらないので、繰り返し述べることはしない。
〔付記〕
ふと思ったんだが、この企画、最初は主題歌ありきだったんじゃねえ?
「EXILEにジョー山中の『人間の証明のテーマ』をカバーさせたら面白いんじゃね?」みたいなことになって、「だったらドラマも作っちゃおうぜ」となったのではないか、と。つまり「EXILE」の歌をプロモートするためにこのドラマをやっつけちゃった、と。
そう考えれば、この時期に不自然にも「人間の証明」をリメイクしたことも、本来であれば不可能なはずの2時間の尺に強引におさめちゃったことも、脚本や演出が雑なことも、すべて説明がつく。
そして、ジョー山中の歌を主題歌にしたというのは、原作への敬意よりも、明らかに角川映画版へのオマージュであるという認識が優先していることを示している。
1978年のTBSドラマ版「人間の証明」は、主題歌をあえてジョー山中にせずにリリィの「さわがしい楽園」にしている点で、角川映画版と一線を画そうとする姿勢がみられる(ただし、1979年のTBSドラマ「野性の証明」と「白昼の死角」は、角川映画班と同じ主題歌をTBSドラマ版でも用いている)。
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コメント
自分もこのドラマを見ました。やはりだいぶ端折らざる負えなかったみたいですね。自分は映画を見て小説に帰ったくちなんですがあの映画はうまくエッセンスを抜き取ったなあと今更ながら思いました。そういえば竹野内豊主演版ではスティービーワンダーの「A PLACE IN THE SUN」でした。妙にマッチしてたなあの選曲は、
投稿: | 2017年4月15日 (土) 12時54分