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思いきり無茶ぶられ人生

4月5日(水)

毎週火曜日は会議日である。

午前午後と、びっしり会議や打ち合わせが詰まっている。

忙しさを誇る気など毛頭ないのだが、生来の買いかぶられ体質のためか、いつもこき使われる。

火曜日は仕事部屋に戻る時間がほとんどなく、空いた時間に戻ってメールをチェックするのが関の山である。

午前10時半ごろ、協定先の韓国の機関からメールが来ていた。

急いで見てみると、エクセルの表が添付されていて、「そちらにあるものの詳細なデータを送ってください」と書いてあった。

こちらにあるものの詳細なデータを、エクセルの表に書き込んで送り返してほしいということらしい。

(ずいぶんと勝手だなあ)

こちらがやらなければならない仕事ではなく、先方の都合で一方的に依頼してきたのである。なぜその作業をしなければならないのか、その理由もメールにはまったく書かれていなかった。

しかし今日はその作業をする時間がないので、おいおいやればいいだろうと思い、後まわしにするつもりでいた。

午前中は、韓国の文化施設からやってきたお客さんのアテンドをしなければならない。

アテンドの最中に、携帯電話が鳴った。協定先の韓国の機関からである。

「ヨボセヨ(もしもし)」以下、韓国語での会話。

「ソンセンニム!(先生)、さきほどお送りしたメールのことで…」

「いまお客さんが来ているので、後でかけ直してください」

「わかりました。では昼食後にかけ直します」といって先方は電話を切った。

午後、1つめの打ち合わせが終わったのが2時半過ぎ。次の打ち合わせまで1時間ほどある。

携帯電話の着信履歴を見て驚いた。

協定先の韓国の機関から、7回ほど電話がかかってきていた。

(かけ直さなきゃいけないのかな…)

と、携帯電話を持ちながら逡巡していると、電話が鳴った。

「ヨボセヨ」

「ソンセンニム!」

「電話に出られずにすみませんでした」

「いえいえ、先ほどメールでお送りしたエクセルの表なんですけど、データを入れて送り返してくれませんか?」

「わかりました。いつまでですか?」

「今日中にです」

「今日中に???!!」

「そのデータを明日、中国の機関に持っていって、交渉の材料にするのです」

「はぁ???」

意味がわからない。とにかく、先方の勝手な都合で、私はどうやら、今日中にそのデータ入力をやらなければならないようなのだ。

(そんなもん、そっちの都合なんだから、そっちでやれよ!)

と言いたかったが、大事な協定先なのでそういうわけにはいかない。

「わかりました。なんとかやってみます」

次の打ち合わせまでの1時間、必死にデータ入力を行う。

それでも終わらずに、3時半、午後の2つめの打ち合わせが始まった。

打ち合わせは5時過ぎまでかかり、ようやく終了。

仕事部屋に戻り、残りのデータ入力をしなければならないのだが、1つ問題が。

今日は業務命令で宴会に出席しなければならず、遅くとも5時半には職場を出なければならないのだ。つまりその時間までにデータ入力を終えて、協定先の韓国の機関にメールで送り返さなければならない。

(あと30分弱か…)

急いでデータ入力の続きを行う。

5時半頃、内線がかかってきた。社長秘書からである。

「そろそろ社長が宴会の会場に出発されます。一緒にお出になりますか?」

「すみません。今日中にどうしても返信しなければならないメールがあって、ちょっと遅れます」

5時45分。ようやくデータ入力が終わり、15分遅れで職場を出て、業務命令の宴会に出席したのであった。

宴会の最中、また携帯電話が鳴った。

「ヨボセヨ」

「ソンセンニム!データありがとうございました。これで明日、晴れて中国に行くことができます」

「そうですか。それはよかった」

(頼むんならもっと早く言えよ!)

と喉元まででかかったのをおさえた。

まことに無茶ぶりな依頼であった。

翌日(6日)。

午後、携帯電話が鳴った。大御所の先生からである。

「昨日のメール、見たか?」

そういえば昨日の午後、大御所の先生の秘書から写真が添付されたメールが送られて来ていた。写真には、読みにくい文字が写っていて、その文字を解読してほしいとの依頼だった。

しかし昨日の日中はまったく時間がとれなかったばかりでなく、夜は業務命令の宴会があったのだ。

「見るには見ましたが…」

「解読は終わったか?」

「い、いえ…まだです」

その写真は、昨日の午後に送られてきたばかりで、しかも何時何時までに解読してほしいなど、書かれていなかった。

「なんだ、まだ解読してないのか」

おいおい、昨日はそれどころではなかったのだ。しかも、夜は業務命令による宴会で、家に戻ったのが夜11時。しかもその宴会に、その大御所の先生も同席されていたのである。

「解読結果はいつまでにお送りすればいいですか?」

「その解読結果をもって先方のところへ行かなければならないから、今日の午後3時までに送り返してくれ」

「午後3時、ですか???!!!」

時計を見ると、いま、午後1時45分である。

あと1時間15分しかない!

急いで解読作業を行う。

しかし、解読作業というのは、本来じっくり時間をかけて行うものである。ケツかっちんでやるような作業ではないのだ。

気がせくばかりで、ちっとも解読できやしない。

とりあえず時間ギリギリに、解読結果をメールで送信した。

ほどなくして大御所の先生の秘書から、

「ありがとうございました」

と、短い返信があった。

これもまた、まことに無茶ぶりな依頼である。

毎日が、こんなことの連続である。

(タイトルは、沢田研二のアルバム「思いきり気障な人生」へのオマージュ)

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コメント

昨日は入学式。

また1年が始まる。

昨晩食べた中華料理が悪かったのか、
腹持ち悪く、朝早く起きてしまった。

時間はまだ4時。夜明け前だ。

再び床に入る気にもならず
電気もつけずに安楽椅子に腰掛ける。

都会の桜だよりを話していたラジオが、リクエスト曲をかけた。

暗がりの中で歌詞を聴く。

なんか甘ったるい歌の印象があったが、
よく聞いてみるとヘーゲルの弁証法みたいなことを言っている。

2番・3番なんか、死ぬ気で働いているミセンたちへの応援歌だ。

君の朝、か。

今日もがんばってみるか。

(名前:(任意)は、岸田智史の「きみの朝」へのオマージュ)

投稿: きみのこぶぎ | 2017年4月 6日 (木) 07時34分

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