韓国映画2本
前回に引き続き、マニアックな韓国映画特集。
1.「誤発弾」(1961年)
まったく予備知識のない私は、映画のタイトルと、DVDのパッケージの写真から察して、黒澤明監督の「野良犬」みたいな、刑事モノの話なのかな?と思ってみてみたら、全然違っていた。
朝鮮戦争のためにその後の生活を狂わされた家族の物語である。
主人公の長男・チョルホは、公認会計士事務所の書記官として、わずかな給料をもらいながら家族を養っていた。
年老いて精神を病んだ母、病弱な妻、問題ばかり起こす弟、米兵相手に体を売る妹、それにふたりの子ども。
ストーリーは悲劇に向かってどんどんと転げ落ちていき、主人公は絶望的な思いにとらわれtまま、映画が終わる。
なんとも救いのない話である。
「こびとが打ち上げた小さなボール」にも通じるところがあるが、韓国の社会や経済が発展していく裏で、社会の底辺に生きる家族の悲劇的な状況を描いている点は、前回に見た映画「こびとが打ち上げた小さなボール」とも共通している。
もうひとつ共通しているのは、「長男の苦悩」である。この2つの映画の中で、長男は一家を支える存在として、次男は問題ばかりを起こす存在として描かれているのである。韓国の家族制度が背景にあることは、容易に想像できる。
60年代から70年代にかけての韓国社会のかかえていた陰の部分を、映画は描こうとしていたのだ。
2.「森浦(サンポ)への道」(1975年)
真冬の雪深い韓国を舞台に、ワケありの3人が、ふとしたことで出会い、旅をするというロードムービーである。
工事現場を転々とする若き労働者ノ・ヨンダル、10年の服役を終えて故郷の森浦(サンポ)へ向かうチョン氏という中年男。そして、若き酌婦のペッカ。この3人が、時に反目し合い、時に意気投合しながら、厳冬の中を身を寄せ合いながら旅をしていく。
韓国の厳冬の景色が、実に美しく映像化されている。その寒々とした中を3人が歩く姿は、絵になるのだ。いや、映画全体に韓国の自然や農村といった風景が美しくおさめられている。
まるで、山田洋次の70年代の映画を見ているようである!
それで思ったのだが、3人のロードムービー、そのうちの1人が長い服役を終えて故郷に帰る、という設定。
これって、山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」ではないか!!?
しかし、ストーリーじたいは、全然違う。「幸福の黄色いハンカチ」のように、わかりやすいハッピーエンドで終わるわけでもなく、むしろ見た人は、あまり救いのない結末だなあと思うかも知れない。
にもかかわらず、この映画は、その美しい映像とともに、心に残る。
孤独をかかえながら生きている3人が、それぞれほんの少しだけ希望を見いだして、映画が終わるのだ。
70年代の山田洋次監督の映画と、比較して見てみると、面白いかも知れない。
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