進水式は結婚式
7月11日(火)に、高校時代の友人・元福岡のコバヤシから近況報告のメールが来た。
「明日はうちの会社の製品を運んでくれる船の進水式で高知に出張、多分その後は披露宴、二次会と続く模様。ちなみに進水式は結婚式とほぼ同じで、船の上に神主さんを迎え、玉串拝礼を行い、船上から紅白の餅搗き、それが終わったら何故か船主の親族に混じり披露宴に出席するのですが、仕事を保証するということで主賓席に座らされ(お金を貸す銀行も一緒です)た上にお祝いの挨拶をさせられ、餅搗きまでさせられます。」
近況報告はこれ以外にも長々と書かれていたのだが、私が目を引いたのは、上に引用した部分であった。
「船の進水式は結婚式と同じで、終わると披露宴がある」
という事実を初めて知り、興味を持ったのである。
私は、
「ぜひ進水式と披露宴のレポートを頼む」
と、半ば冗談で返信した。
すると翌日、式典の合間を縫って、コバヤシが進水式の写真、さらには、披露宴の写真を携帯メールに送ってくれたのである。
暇をもてあましている私に、退屈しのぎということで、義理堅いことに送ってきてくれたのである!
コバヤシが送ってきた式次第によると、進水式は、以下の手順で行われるそうだ。
「神事 ○○八幡宮宮司様による
開会の挨拶
修祓
降神
命名の儀 ○○開運有限会社 代表○○様
祝詞奏上
玉串奉奠
昇神
閉会の挨拶
餅投げ 来賓全員
支鋼切断 ○○海運有限会社 ○○様
進水」
コバヤシは、来賓として出席し、祝辞を述べ、餅投げにも参加したらしい。
コバヤシによる、次のような解説がついていた。
「進水式の会場(船上ではなく船の横でした)には祭壇が造られ(簡易セットがあるようで終了後はあっという間に箱にしまわれてました)、鏡、野菜(ナス、キュウリ)、果物、米、餅等が飾られます。式の概要は神様を降臨させ、船に名前を与え、玉串礼拝を行い船の安全を祈願し、最後に神様は天に帰っていくというような流れのようです。
面白いのは船に名前を与える命名の儀ですが、この儀式の前までは船には名前が無いことにっており、船体には名前がペイントされていますが紅白の横断幕で隠されています。宮司が船主に名前をが書かれた紙を渡し、船主がそれを船に向かって読み上げたところで、横断幕も落とされ、正式に名前がついたことになるようです。ちなみに、別の進水式でうちの部長が命名の儀をさせて貰った際に、参列者に向かって名前を読み上げたところ、後で、違う!と怒られたそうです。部長は名前を紹介するものと考えていたらしいのですが、実際には船に対して名前を与える=船に命を吹き込む儀式のようで、船に向かって読み上げないとダメだということのようです。
神事の後は、主賓は船上に登り、餅搗きを行います。最初に4人が10センチ四方の餅を投げ、それを合図に10人ぐらいで、段ボール数箱分の紅白の餅を投げます。船上は10メートルを超える高さなので、ちょっと怖いです。
最後に支鋼切断で、これは、船首にセットしたシャンパンを綱を切って船体にぶつけて割って、それを合図に船を海に送り出す儀式です。船が進む時にくす玉が割れるような仕掛けになっています。ちなみに、この綱を切るのは船主の娘さんと決まっているようです。」
実に詳細なレポートである。これはもう、立派なフォークロアだ!
さらにこのあと、自分の体験談が綴られていた。
「慣れないことをするとなかなか上手くいかないものです。玉串を置いてからのニ礼の際も、宮司さんがあの杓文字みたいなの(無知ですいません)を持って、ニ礼するのを見ていたので、実際自分がやる段になったら手を合わせて拝んでしまうという体たらく。二番目にやらされたこともあり、かなり緊張していて最初の人のを見た筈なのにとんでしまいました。後の人達のを見る度に、違うじゃん!!と恥ずかしいったらありゃしない。同僚からは席に戻って来たらプッと笑われる始末。
それから餅まきですが、最初の餅を船上から投げる際に、遠くに投げようと力をこめて投げたら、思い切り手を手すりにぶつけてしまい、餅はすぐ下にボテッと落ちて、情け無いやら痛いやら。これで手の骨にヒビでも入って労災にでもなったら恥ずかしくて会社に行けやしない(こんなのでも黙ってたら労災隠しです)。まあ何とも有りませんでしたが。
余談ですが餅まきも地方にによって違うようで、今治の進水式では小さい紅白の餅だけでした。グループ会社の役員さんが高松だったかどこかで餅まきをした際には、直径30センチぐらいのデカい餅を渡され、こんなものを10メートルを超える高さから投げたら下の人が大怪我するんじゃないか!とビックリしたとのこと。
なお、進水式の後の披露宴では主賓の祝辞をやらされましたが、カミカミでした。7~80人の船社さんが入り乱れていました。
それにしても、普段、神道なんか関係ないやと思っていたのに、会社の仕事の中に神事が出てくるなんて奇妙なもんですね。
では、進水式の話はこの辺で。」
暇をもてあましていた私の退屈しのぎに、コバヤシが送ってくれた詳細なレポートは、実に興味深いものであったので、ここに記録しておく。
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