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孤独のグルメ・城下町編

8月3日(木)

ほぼ1カ月ぶりに出張である。

新幹線と高速バスを乗り継ぐこと約3時間。目的の町に着く。内陸の盆地で、古い町並みが残る風情のある城下町である。

年に1度、仕事でこの城下町に訪れる。いつもは新幹線と在来線を乗り継いでその城下町に行くのだが、今回は在来線ではなく高速バスを使うことにした。

高速バスの終点は、その城下町の駅前である。ここから、市内を循環するレトロなバスに乗り換えて、今日の用務先に向かわなければならない。タクシーで行くこともできるのだが、それでは風情がない。

高速バスを降りると、目の前にバスの券売所の窓口があり、その目の前に親切そうなおばさんが立っていた。観光案内所の人らしい。

(市内循環バスの時刻表はないかなあ…)

僕が券売所の前でウロウロしていると、

「何かお困りですか?」

と、券売所の前に立っていたそのおばさんが声をかけてきた。

「あのぅ…○○○○○○○に行きたいんですが…」

「ですと、市内を循環するレトロなバスに乗っていただくのがいいですね」

それは僕もわかっていた。

「バスの時刻表みたいなものはありますか?」

「どうぞ」

おばさんは私に、時刻表と路線図が書いてあるチラシを渡した。

「えーっと、どこの停留所で降りればいいんでしょうか」

年に一度のことなので、どこで降りたらいいのかつい忘れてしまう。

「○○○○○○○○ですよね。…あら、どこだったかしら。ちょっとお待ちください。

するとそのおばさんは、券売所に入っていき、中にいるおばさんに聞いていた。

おいおい、観光案内所のスタッフだろ!それに、僕がこれから行く用務先は市内でも有名な場所である。その最寄りのバス停がどこだか知らないのか?

しばらくして、そのおばさんが出てきた。

「○○○○という停留所で降りていただければいいです。いまからだと、12時ちょうどのバスがここから出ますよ」

時計を見ると、あと5分で12時である。

「お昼も食べたいんですが、そのバス停の近くに食堂はありますか?」

「いっぱいある…と思いますよ。観光地ですから」

ちょっと自信なさげに言った。このおばさん、本当にこの町のことをよく知っているのか?と不安になった。

「1時にその○○○○○○○で仕事があるんですが、本当に近くに食べるところがありますよね」

「大丈夫…だと思いますよ。観光地ですから」

やはり自信なさげである。

とにもかくにも、12時発のバスに乗ることにした。

市内を循環するレトロなバスは、市内をぐるぐると回り、僕が目的とする停留所に着いたのが12時23分だった。

バスが停留所にとまる少し前に、バスの窓から食堂が見えたので、停留所を降りてから少し戻って、その食堂に行くことにした。

お店の前に立つ。

(ソースカツ丼の店…か。お店の名前も、またずいぶんと大きく出たものだ)

ちょっとカツ丼はいまの体調から考えると重たい感じがしたが、どうやらこの町の名物で、その店はかなりこのソースカツ丼を推しているようである。

昔ながらの食堂、といった感じのそのお店に入り、テーブルに座る。

愛想のよさそうなおばさんが、

「いらっしゃいませ。お休みください」

と言った。

「ソースカツ丼をください」

「はーい」

私以外に客はいないのだが、しばらく待っていてもソースカツ丼がなかなか出てこない。

手持ちぶさたで店内を見渡すと、やたらと客に対する「禁止事項」の貼り紙が貼ってある。

(うーむ、苦手なタイプの店だ…)

観光地の一等地で、しかもお昼時だというのに、お客さんがいない理由が、なんとなくわかる気がした。

15分ほどたって、ようやくソースカツ丼が出てきた。

時計を見ると12時40分を過ぎたところである。

慌ててソースカツ丼をかっ込んだ。

(うーむ。思っていた味とちょっと違うなぁ…)

カツ丼にかかっているソースが甘辛いのがこのお店の特徴らしいのだが、それが、僕の口には合わなかったのである。

(どうやらこの店は僕にとってハズレだったようだ)

ソースカツ丼を味わう暇もなく、会計をすませて急いで用務先に向かい、用務先の会議室についたのが、会議の始まる時間の3分前。すでに僕以外の方々は席についておられた。ちなみにその会議では、僕がいちばん年下である。

「それでは全員お揃いですので、会議を始めます」

なんとなくばつの悪いまま、会議は始まった。

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コメント

これから旅の空ゆえ、これにて。

宿の空きがない中、コメントだけは最上の宿を取ったが、会いずじまいで残念。

投稿: 青海こぶぎ | 2017年8月 5日 (土) 06時40分

こぶぎさん、今回も大正解です!

投稿: onigawaragonzou | 2017年8月 7日 (月) 00時36分

屋上に武者鎧のある西洋宮殿
火災現場検証
おじさんにラブリーなコンサート
国産ナマズバーガー試食
吹きだまり聖地は俺の城
サンバのリズムでよさこい踊り

時事ネタが多く、どうにも収まらないので、今月の乙女旅は夏休み特集として5日間隔で更新します。サンバ de よさこい以外のクイズの答え合わせは、そちらで。

投稿: 旅の空で見たもの(こぶぎ) | 2017年8月 9日 (水) 13時21分

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