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おかえり、ヤマジョー

8月25日(金)

山田穣、という人をご存じだろうか。

ヤマジョーこと山田穣は、僕と同い年のアルトサックス奏者である。

僕がヤマジョーの演奏を初めて聞いたのは、たしか高校2年の時である。やはり高2だった彼は、ある大学のジャズ研のライブにゲストとして出演していた。

そのころ僕は、高校の吹奏楽部でアルトサックスをはじめてまだ2年目だった。友人のコバヤシも、同じく、高校からテナーサックスをはじめたのである。

コバヤシたちとライブを聴きに行った僕は、とても驚いた。

(すごい…すごすぎる…)

高校2年とはまったく感じさせない、まさしくプロの演奏であった。

僕はすっかり魅了されたと同時に、同い年の高校生として、激しく打ちのめされたのである。

その後、コバヤシはヤマジョーと同じ大学に進むことになり、そこのジャズ研で、ヤマジョーと知り合うことになる。そこで彼はヤマジョーと同じ時を過ごし、ことあるごとに、彼はヤマジョーのすごさを力説していた。

大学生になったヤマジョーも、相変わらず別格な演奏で、多くの人を魅了した。

ところが、ある時期からヤマジョーは、表舞台から姿を消してしまった。ジャズの世界に生きる知り合いの話だと、心の病をかかえてしまったらしいというのである。

自分に厳しいがゆえに、自分で自分を追い込んでしまったのだろうかと、僕は勝手に想像した。

そして、以前、映画評論家の町山智浩さんが、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンの人生を描いた映画 『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』を解説している回で、ブライアン・ウィルソンの天才音楽家ぶりについて述べた、

「ほんとうの天才音楽家とは、自分の内側から泉のようにわき出てくるメロディを抑えることができず、苦しんでいるのだ」

という言葉を思い出したのである。

さて、そのヤマジョーが、8月23日に、都内のライブハウスで復活ライブをしたという話を聞いた。

最初にそのことを教えてくれたのは、高校のOB楽団でかつて一緒に演奏したことがある、私より6学年下のサイトウ君である。

「アルトサックス奏者の山田穣さんの復活ライブを見に行ってきました。ブランクを感じさせない吹きっぷりに、ただただ感動…。

開場前から長蛇の列だった上に客席もほぼ満席という盛況ぶり。

みんながヤマジョーさんの帰りを待っていたんですね」

ジャズドラマーのサイトウ君も、大学生の頃、ヤマジョーの演奏をよく聴いていたのだという。

もう一人、ライブに行ったことを知らせてくれた人がいる。

高校の同期の友人、コバヤシである。以下、メールを抜粋する。

「昨日、大学の同級生の山田穣(通称ヤマジョー)の復活ライブに行って来ました。

東京に帰って来て三年目、ライブに行きたかったのですが、活動を休止していたために行けなかったのです。昨日漸く復活してライブを行ったので、20数年振りに演奏を聴きに行きました。

長年彼の演奏を生で聴いたことが無かったので期待と不安でドキドキしながら最初の1音を待っていました。でも、それは杞憂に過ぎず本当に素晴らしい演奏でした。これまでの20数年間に何があったかは詳しくは判りませんが、年月を経て出す音には有無をいわせない説得力があります。演奏が良い悪いとかいう問題では無く、自分の出したい音を奇をてらうことなく真摯に演奏する姿は、学生時代の一時を共有した(と思っているのは自分だけかもれませんが…)という贔屓目もあるかもしれませんが、本当に感動的でした。年甲斐も無く目頭が熱くなってしまいました。

若手ミュージシャンも何人か来ていたようで、最近私がかなり注目しているアルトサックス奏者は、「後光が差していた。レジェンドです!」とツイッターで呟いて(ちょっと大袈裟かな)幸せを噛みしめていましたし、共演者のやはり若手のホープのピアニストも共演出来た幸せを語っていました。勿論、我々聴衆もその音を共有出来る喜びに浸っていました。」

共演者の誰もが、ヤマジョーと共演できたことの喜びを噛みしめ、ライブを聴いた誰もが、彼の演奏に魅了されたのである。それは、演奏を聴いた感動と感慨を、誰かに伝えたいと思わせるほどのものであった。

…ジャズに詳しくなくて、ヤマジョーのことを知っているわけでもない僕が、ヤマジョーについて書くことは、失礼かも知れないと逡巡したが、高2の時に聞いた彼の演奏は、僕にとってはいまも衝撃だった。

そして同い年というのも、何かの縁である。これから彼がどこかでライブをして、観客を魅了する演奏をしているという風の便りを聞くたびに、僕は自分自身を奮い立たせるだろう。

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