祝・ノーベル文学賞受賞
10月5日(木)
夜の8時頃だったか。
「カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞」というニュース速報が流れた。
そのあとの夜のニュース番組は、ツッコミどころ満載だった。
まず、カズオ・イシグロが「日本生まれ」であることをやたら強調している。
夜11時から始まる民放のニュースでは、政治部記者あがりのキャスターが、「カズオ・イシグロの本は一冊も読んだことがない」としながらも、「作品を通じて、日本の奥深さを世界に知ってもらえるとよい」と、実にトンチンカンなコメントをしていた。
なんとかして、ノーベル賞と「日本人」を結びつけようという報道は、今年のノーベル物理学賞にも見られた。
受賞したのは3人の米国人なのだが、日本人研究者も装置開発に貢献していた、ということを、さかんに強調していた。
「日本」とかかわりがなければ、カズオ・イシグロがこれほどニュースで取りあげられることもなかっただろう。
次に、これも毎年ニュースで流れるのだが。
今度こそ、村上春樹がノーベル文学賞を取るのではないかと、毎年、発表当日には、多くのハルキストたちが1カ所に集まって、固唾を呑んで見守っている。
で、「カズオ・イシグロが受賞」という速報が流れて、今年もガックリ、となる。
ま、毎年の風物詩みたいなものなのだが、面白いのは、ハルキストたちが、
「村上春樹は、カズオ・イシグロを弟分のように思っているだろうから、カズオ・イシグロが受賞して、春樹も喜んでいると思う」
みたいなことをコメントしていて、なんとかして村上春樹と結びつけることで自身を納得させようとしているハルキストたちを見て、微笑ましく思った。
さらに、ニュース番組のナレーションの中で、『わたしを離さないで』のストーリーの核心部分を、思いっきりネタばらししていたんだが、あれはかなりマズいんじゃないだろうか?
映画「猿の惑星」でいうところの、「自由の女神だったのか!」的な、核心部分である。
これから本を読む人にとっては、災難以外の何物でもない。
…といいつつ、受賞記念に、私が過去に書いた『日の名残り』評を再掲する。
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