« 霧吹きは足の裏を救う | トップページ | 原稿ため込み党の気がかり »

記者発表の日

11月9日(木)

先月、ある事務所からの調査依頼でお手伝いをした、調査の成果が、記者発表される日である。

もちろん、最初から記者発表が想定されていたわけではない。

調査をしてみて、はじめてそれが記者発表に値する成果であるという結論に達したのである。

私は、先日の調査所見を長いレポートにまとめ、それを事務所のUさんに送った。

事務所のUさんはそれをとりまとめ、報道資料をつくった。

「記者発表の日は、11月9日に決まりました」

「そうですか」

「ひょっとしたら、記者発表のあとに、記者たちが記事を書くために、先生のところに質問が来るかも知れません」

過去にも1、2度、そんな経験があった。

そのときは、職場の電話にかかってきたのだが、今回は、職場の電話をとれる状況にない。

「その日は、職場の電話に出られそうもないので、記者さんたちに、私の携帯電話番号を教えておいてもらえますか」

「わかりました」

本当のところ、かかってくるかどうかもわからないので、なんとも自意識過剰な提案なのだが、いたしかたない。

さて当日。

ふだんは電話がかかってくることなんて全然気にしていないのに、この日ばかりは、少し気になってしまう。

(もう記者発表は終わった頃だろうか…)

そもそも何時に記者発表がおこなわれるのか、わからなかったので、何時頃、記者から電話がかかってくるのかもわからない。

まるで、芥川賞受賞の吉報を電話の前で待っているマヌケな小説家のような心境である。

夕方になって、事務所のUさんからメールが来た。

「先ほど報道発表が無事終わりました。

報道各社から先生の連絡先を聞かれましたため、お教えいただいた携帯電話の番号を教えましたが、質問の電話でご迷惑をおかけしているのでは無いかと心配しております。

新聞社の皆さんとしては、地方版にとどめるか全国版に載せるかのちょうど端境にある内容だったようで、上手く全国版に載ってくれるといいなあと思っております」

記者発表は夕方だったんだな。報道各社から連絡先を聞かれたということは、複数の新聞社から問い合わせの電話が来るということだろうか。

ますます緊張してきた。

ほどなくして、携帯電話がなった。

予想通り、新聞記者からである。

結局、電話が来たのはその1社だけだった。

(とんだ自意識過剰だったな…)

さて、気になるのは、この記事が、Uさんのメールにあったように、地方版にとどまるのか、全国版に載るのか、という点である。

これについては、思い出すことがあった。

もう10年以上前になるが、やはり今回と同じ事務所から調査依頼が来て、調査にうかがった。

すると、どこから聞きつけたのか、一人の新聞記者が取材にやって来た。

あとで事務所の方に聞くと、いつも、どこからか情報を聞きつけてきて、熱心に取材する人だとのことだった。

調査は順調に進んだ。記者はその調査でわかったことを、いろいろと質問してきたので、私はそれに答えた。

なんとも地味な成果だったので、はたしてこれが記事になるのだろうかと半信半疑だった。載るとしても、地方版だろうと思っていたのだが、なんとこれが、私のコメントつきで、全国版に載ってしまったのである。

他に取材した新聞社がなかったから、その記者による、単独スクープということになる。

スクープといったって、他の新聞社が後追いで記事にすることもなく、記事自体は、地味な内容だった。

事務所の方も、いきなり全国版に載ったことに驚いていたようだった。

その後、その記者は、東京本社に「栄転」した、と聞いた。

そのとき私は思った。あの記者は、あの地味な内容の記事を、持ち前の筆力で、「ニュースバリューがある」記事として、かなり強引に全国版に載せることに成功したのではないだろうか。

そもそも、記者発表による「受け身」の記事ではなく、自分の足でかせいだ記事だった。

それで、横並びではない記事を書くことに成功したのである。

その記者が東京本社に「栄転」できたのは、やはり、記者としてのそうした姿勢が、ぬきんでていたからではないだろうか。

どういうニュースであっても、記者がそれを伝える価値のあるニュースだと判断しないかぎり、そのニュースは死んでしまう。逆に、記者は筆力の限りを尽くして、それを伝えようとすれば、それは受け入れられるのである。

それは記者に限ったことではない。私自身にとっても、大きな教訓である。

さて、今回はどうだろうか。前回のときよりも、ニュースバリューのある成果だと、個人的には思うのだが。

地方版にとどまるのか、全国版に載るのか。

あのときのような記者がいてくれればなあ。

|

« 霧吹きは足の裏を救う | トップページ | 原稿ため込み党の気がかり »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

全国紙にさきがけてコメントしようと思いましたが、
ログインしないと、有識者コメントがありそうなところまで、記事が読めません。

うるしませよ(涙)。

(おぷむ(業務) よんらく)
うぃ え いんぬん よんお こめんと い やっぐく かんご にか
さくちょ はみょん ちょっけっそよ。

投稿: こぶぎのさく | 2017年11月10日 (金) 07時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 霧吹きは足の裏を救う | トップページ | 原稿ため込み党の気がかり »