葬儀の前に ~散髪~
11月20日(月)
葬儀の打ち合わせも一通り終わったのだが、僕にはやるべきことがあった。
それは散髪である。
いまの僕は、治療のせいで髪の毛がだいぶ抜け落ち、しかも白髪が極端に増えてしまった。
これではおじいさんというより、ちょっとした幽鬼だな。
まあ仕方がないことなので、ありのままでいるしかないと思っていたのだが、父の葬儀であまりぶざまな格好はしたくないし、久しぶりに会う親戚に何か言われたりしたら面倒である。
ちょっとでも身だしなみを調えようと、行きつけの散髪屋さんに行くことにした。
いまの僕の担当者は、リーさんである。
以前にも書いたが、昨年まで、リーさんは見習いだった。今年に入り、他の支店からこの店に正式に異動になり、晴れて散髪を担当するようになったのである。
それまでの僕の担当はTさんだったのだが、そのTさんが今年の春くらいに人事異動で他の支店に移ってしまったので、それ以降は、リーさんに散髪をお願いすることにしていた。
「どのようにしましょうか」とリーさん。
私はどのように言おうか、少し逡巡したあげく、
「ちょっと治療のせいで髪の毛がだいぶ抜け落ちているので、あまり短く切らずに、調える感じにしてください。あと、カラーリングもお願いします」と言った。
「眉毛もそのようにしましょうか」
「お願いします」
リーさんは、事情を飲み込んでくれたようで、何も言わず、実に丁寧に散髪、染髪、顔そりを仕上げてくれた。
ふだんなら、染髪や顔そりを見習に任せるところを、すべてリーさんがしてくれたのである。
すべてが終わり、
「いかがでしょうか」とリーさん。
「とてもいいです。ありがとう」
散髪屋を出て、少し気分が上向きになった。
別におしゃれをした、というほどのことではないが、やはりおしゃれって、大事だな。
というか、散髪って大事なのだ。
この気持ちを、忘れないようにしよう。
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