コバヤシはBARにいる
12月31日(日)
高校時代の友人、元福岡のコバヤシが、この年末に、彼の前の勤務地だった福岡に「帰省」し、福岡時代に知り合ったお店を訪れたり、友人たちと再会したりしたという。
BARめぐりが趣味のコバヤシは、折にふれて、BARで知り合った人たちの人間模様をメールで教えてくれる。
今回の旅でも、中州の行きつけのBARに立ち寄ったらしく、BARでのエピソードに添えて、中州の夜景の写真と、古いブランデーの写真を送ってきてくれた。
「中洲の夜景と、BARで見せて貰った60年代の古いブランデー(全く興味無いでしょうが)の写真添付しますのでご覧下さい。
ちなみに、お酒は、ボトルのデザインが変わると味も変わるそうで、このブランデー達も、ご覧の通り60年代はなかなか洒落た趣味の良いラベルだったのですが、新しくなるにつれ、お酒の味同様、無味乾燥なものになってしまいました」
私の返信。
「私はBARにはたぶん一生縁がないと思うので、貴君のBARをめぐる人間関係のエピソードはとてもうらやましく思います。
ラベルの話は興味深いです。全然レベルの違う話ですが、今日、町の小さな古本屋によって文庫本を1冊だけ買ったのですが、そこの古本屋オリジナルの文庫本カバーがシンプルながら実にいいものでした。本を手に取った時の感触もよく、本に対する愛着を喚起させる力を持っていた。そういうところにこだわる古本屋さんも減ってきたのだろうな」
コバヤシの返信。
「BARは色々な人がいて意外に面白いところです。しかもバーテンダーという人達は共同体意識があるようで、同じ地域の同業者は大体知り合いで、お互いお客を紹介しあったりしますし、東京のバーテンダーが九州や北海道の店を紹介してくれたりもします。最近よく行く浅草のBARの方は、北海道と京都のバーテンダーとつるんでいたりします。
そんなことはさておき、本の話ですが、ちょうど今読んでいる吉田健一の文庫本が、本について語っているエッセーで、戦前にヨーロッパから取り寄せた蔵書の装丁が素晴らしく本棚に飾っておくだけでも美しかったとか、昔のヨーロッパの本は持主がなじみの職人に特注で装丁を頼んでいたとか本に関する想いを綴っていて面白いです。貴君の文庫本カバーの話もなんとなく共感できました。ちなみに吉田健一の蔵書は戦災で全て焼けてしまったそうです。
そう言えば、数日前に中洲のBARのマスターがこんな話をしていました。「お客様で印刷関係の方がいるんですけど、その方が言っていたのは、昔の本というのは活版印刷だったので、字の配列というか並びに非常に気を配っていたそうです。良い本というのは、その字の並びが本当に美しく、見る人が見れば良く判るそうです。でも今の本は全部パソコンとかでやってしまうので全然駄目だそうです」
なるほど、BARにはいろいろな人が来るので、いろいろな話が聞けるらしい。
ほどなくしてコバヤシから追伸が来た。
「メールを打った直後に、実家の本棚を見ていたら、昭和2年に発売されたと思われる北原白秋の童謡集が何気なく有りました。
装丁と挿絵は恩地幸四郎という有名な画家でした。
ボロボロですがレトロな装丁が良い感じです。活字の方は何とも良く分かりません。でもカタカナの詩は面白いかな。行の間も少し広めでちょっと良い感じでしょうか。
ブランデーのラベルからはじまった、装丁談義。
まるでBARで話をしているようだ。
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