悪い予感しかしない電話
12月16日(土)
今日は午後から職場で、自分がホスト役の「同業者寄合」である。
15人くらいが集まるのだが、全国各地から来てくださるので、最初から最後まで気を抜けない。
もともとそういうのが苦手な人間なので、なおさらである。
午前中に会場の設営が一通り終わり、つかの間の昼食をとっていると、携帯電話が鳴った。
見知らぬ番号である。
「もしもし」
「あのう…鬼瓦権造さんの携帯電話でしょうか」
「そうですが」
「こちら、○○バスの××営業所の者ですが」
「はい」
「鬼瓦○子さんのご関係の方でしょうか?」
鬼瓦○子、というのは、私の母の名前である。
「私の母ですが…」
バス会社から電話???
イヤな予感がした。
母の身に何かあったのだろうか?
事故に巻き込まれたとか??
突然バスの中で倒れたとか??
悪い予感しかしない。
先日父を亡くしたばかりなのだ。
「母がどうかしましたか?」私の声は震えた。
「実は…」
「……」
「鬼瓦○子さんが、財布を落とされまして、その財布がこちらに届けられたのです」
「財布??」
「ええ。現金は入っていなかったのですが、中にカードなどが、そのまま入っていました」
なるほど、それで落とし主がわかったということか。
「ただ、ご本人様の連絡先がわかるものがなくて、何かご連絡できるものがないかと探したところ、お宅様の電話番号が書いたものがありまして…それでご連絡さしあげた次第です」
「そうでしたか…」
「こちらに取りに来ていただくようにご本人様にご連絡いただけますか?」
「わかりました。ありがとうございます」
急いで母に電話した。
「昨日、財布落としたでしょう」
「どうして知ってるの?昨日、それで大変だったんだから」
「バス会社から電話があったよ。財布が見つかったって」
「そうそう、バスの中で落としたのよ。…でもどうしてそっちに連絡が行ったの?」
「知らねえよ。財布の中に俺の電話番号を書いたものがあったんじゃねえの?」
「なるほど」
「現金はもう抜き取られていたようだけど、それ以外は残っていたみたい」
「あらそう。現金は5000円くらい入っていたのに」
ま、5000円で済んだのなら、不幸中の幸いである。
「とにかく早く取りに行った方がいいよ」
といって、電話を切った。
まったく、人騒がせな話だ。こっちは命にかかわることなんじゃないかとびっくりしたじゃないか!
そんなこんなで、午後の会合が始まった。
しばらくして、また携帯が鳴った。
今度は母からの電話である。
何だ何だ?またトラブルか??
気になって仕方がないが、会合の最中なので電話に出ることができない。
休憩時間に急いで母に電話した。
「どうした?」
「財布が無事戻ってきたわよ。現金は入っていなかったけど」
「そんなことで電話するなよ!こっちは大事な会合でそれどころじゃないんだから!」
「ごめんごめん」
命にかかわらなければ、たいていのトラブルはたいしたことはないのだ、というのが、最近の身のまわりの経験から私が実感していることである。
それからすれば、財布を落としたくらいたいしたことではないのだが…。
しかし、落ち着いて考えたらだんだん腹が立ってきた。
落ちている財布から現金を抜くなんて、世の中には最低のやつがいるものだ!絶対に許さねえ!
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