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約束を果たすための仕事

疲労困憊だが、2月21日におこなわれた国際シンポジウムについて記す。

映画監督の大林宣彦さんがよく、「映画を作ることは約束を果たすことだ」と言っていて、その言葉が、僕が仕事をおこなう上での指針となっている。

いろいろなところに調査に行き、調査をすることで人とつながり、さらに「また一緒に仕事をしましょう」とまた約束をする。

もちろん、果たせない約束も多いのだが、一つ一つ仕事をしていくことで、約束を果たしていく、といった感覚は、大林監督の影響によるところが大きい。

今回の国際シンポジウムも、まさに約束を果たすためにおこなったものであった。

一昨年の11月、韓国のある機関とうちの職場が交流協定を結んだ。そのとき、来年はうちの職場で、日本と中国と韓国が参加する国際シンポジウムをおこなうことを約束した。

しかも、2017年11月におこなうことまで約束してしまった。

その担当になったのが僕なのだが、僕はすっかり困ってしまった。

約束をしたからには、実行しなければならない。しかも意味のあるシンポジウムを。

考えたあげく、あるテーマを考え、それを提案したところ、すんなりと了承された。

しかしこのシンポジウムが本当に実現するのか、半信半疑だった。僕が考えたテーマというのが、やや難しいテーマで、僕にも手に負えないような内容だった。僕に手に負えない内容のテーマが、はたしてほかの人たちに理解されるだろうか?

まあそれでも、提案してしまった以上はやるしかない。

だが昨年夏、僕は体調を崩し、国際シンポジウムどころではなくなってしまった。

とても11月にシンポジウムなどおこなえない状況になったのだが、上司や同僚たちとも相談し、2018年2月に延期することにした。

シンポジウムに関わる実務も、僕だけではなく、何人かの同僚とチームを組んでおこなうことになった。

昨年秋になりようやくシンポジウムに向けて動き出したのだが、開催までに、さまざまなトラブルが起こった。

海外の機関との間にありがちなトラブルである。

しかもシンポジウム当日は、先方の機関の社長までお見えになるというのだから、なおさら問題がややこしい。

まず、参加をあてにしていた中国の機関とのコミュニケーションがとれない。

いわば音信不通になったわけだが、ようやくコミュニケーションがとれたと思ったら、不参加を表明された。

これで、日・中・韓の3機関合同シンポジウムという構想は崩れた。

さてどうしたものか。

僕は、以前に交わした約束のことを思い出した。

それは、以前韓国の若き先生に、「今度日本にお呼びします。ぜひ日本に来て講演してください」と約束したことである。

中国の機関が不参加ということなら、この先生との約束を果たそうではないか。

企画を仕切り直したことにより、より中身のあるシンポジウムになることを目指した。

だが、相変わらず、韓国の機関とのやりとりは、かなりややこしいことになっている。

交渉の窓口になっていた親韓派の同僚は、先方の機関とのやりとりにすっかり疲弊してしまい、

「これ以上私がメールを送ると、国際問題を惹起しかねません!」

と、気分が高揚する一幕もあった。

なんだかんだで、当日を迎えた。

細かなアクシデントはあったものの、ひとまず、滞りなくシンポジウムは終了した。

参加者は40名ほどだった。平日で、辺鄙な場所での開催にもかかわらず、40名集まったというのは、まずまずといったところであろう。

いちばんうれしかったのは、前の職場の卒業生で、今は金融機関に勤めているF君がわざわざ聞きに来てくれたことである。あんな地味なテーマなのに、よく来てくれたものだと感謝した。

今回は慌ただしくてほとんど話ができなかったので、あらためて食事でも、と、また新たな約束を交わした。

こうして、このシンポジウムで、僕は不十分ながらも、二つの約束を果たした。

一つは、交流協定を結んでいる機関との約束。

もう一つは、「今度日本にお呼びしますよ」と約束した韓国の若き先生との約束である。

その先生から、帰国後にメールが来た。

「今回は呼んでいただき、本当にありがとうございます。先生方の暖かい心を忘れず、長く記憶します。

後日、ご恩返しできたらと思います。ソウルに来たら、ぜひご連絡ください。

本当にありがとうございます。ご自愛ください。

またお会いできることを願って...」

これからも、約束を交わしては果たすことの、繰り返しだろう。

さて、あとどのくらい、約束が果たせるだろうか…?

そんなことを思っていたら、ある編集者からメールが来た。

「数年前にお約束いただいたお仕事、進捗状況はいかがでしょうか?」

もう5年以上前に約束したお仕事を、まだ果たしていなかった。

この約束も、果たさなければならない。

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