マジシャンズセレクト
2月17日(土)、18日(日)
毎年この時期に行われる、2日間にわたる業界人祭りである。
寒い地域の町で行われるのが、この業界人祭りの特徴だ。
今年は、「新幹線がとまる駅から在来線で2駅の町」でおこなわれる。
ほぼ毎年参加しているのだが、今年は体調がアレなことや、引っ越しのことなどもあり、参加するつもりはなかった。
事務局の人には、欠席するつもりです、と最初お伝えしたのだが、事態はそう簡単ではなかった。
いささかややこしい話になるのだが。
僕はこの町で、ある委員を委嘱されていて、その委員会の会議が、2月19日(月)におこなわれることになった。
なぜこの日程に決まったかというと、その前の17日、18日の業界人祭りに合わせて、わざわざ翌日に会議を設定したというのである。なぜなら、業界人祭りの常連と、その委員会の委員というのが、かなりの部分で重なるためである。
つまり、17日~19日に、業界人祭りと、その委員会をいっぺんにやってしまおう、そのほうが効率的だ、というわけである。
業界人祭りに参加することを前提に作られたスケジュールというわけだ。
さあ、どうしよう。業界人祭りを不参加にして、委員会だけに出ようか。
そうすれば、前日の18日(日)の夜にこの町に入ればよいことになる。
しかし、事態はそう簡単ではなかった。
今度は前の職場からの依頼で、16日(金)に、前の勤務地で会議を行うことになり、委員である僕も、その会議に参加しなければならなくなった。
それでまた考えた。
今後しばらく、前の勤務地を訪れる機会はないだろうから、この際に、やれることをやっておこう。
というわけで、前日の15日(木)に、悪友のKさんに頼み込んで、「押しかけ作業」をさせてもらうことにした。これについては前に書いた。
さて、16日(金)に前の勤務地の会議に出て、翌日(土曜日)にいったん家に帰り、日曜日にまた移動して、19日(月)の会議に出る。
というスケジュールも考えてみたのだが、頭を悩ませたのは、「業界人祭りがおこなわれる町、すなわち月曜日に会議を行う町」というのが、地理的に、「前の勤務地」と自宅の間にある、ということである。
つまり「業界人祭り」に出ずに、いったん家に帰るのは、無駄な動きということになるのだ。
…どうもわかりにくいな。地名を出せば一発でわかる話なのだが、出さない主義なのでね。
考えたあげく、いったん家に帰るのではなく、土日の業界人祭りに出ることにした。
そうなると、今度は体調が心配である。
自分の体力が、そこまでもつだろうか…。
業界人祭りじたいは、座って話を聞いていればいいだけなので、なるべく体力を使わずに、じっとしていよう。
問題は、土曜日の懇親会である。この業界人祭りで、いちばん体力を使うのが、懇親会なのだ。
そうだ!懇親会を欠席すればいいんだ。
…と思ってみたのだが、すでに参加を申し込んじゃってるし、まったく出ない、というわけにもいかない。
そうだ!みんなが気づかないうちに途中退席すればいいんだ。
せっかくお金を払ってしまったんだし、最初だけ出て、食べるものだけ食べて、さっさと退席しよう。
さて17日(土)。
業界人祭りの初日が終わり、懇親会場に向かった。
(懇親会の席は自由席だし、後のほうに座って、ころ合いを見てそっと帰ろう)
と思って受付のところに行ったら、担当の方が、
「あ、先生、よく来てくださいました。ありがとうございます」
「はあ」
「先生の席はこちらです」
「え?席が決まっているのですか?」
「そうです」
といって案内されたのが、一番前の、偉い人たちばかりが座る席だった。
どうして俺が?と思ってよく考えたら、その町の委員をしている、というのがどうも理由らしかった。
さあ、こうなるともう帰れない。
結局最後までいることになったのだが、とにかく体調が悪いので、できるだけその席でじっとしていることにして、挨拶をしに動き回る、というようなことはしなかった。
きっと、アイツは挨拶にも来ない失礼なやつだと思った人が多かったに違いない。
懇親会は午後9時過ぎに終了。さすがに2次会は勘弁してもらって、そっとホテルに戻った。
18日(日)
昨日からずっと、
(俺が今回の業界人祭りに参加する意味なんて、まったくないんだよなあ)
と思いつつ参加していた、というのが本音である。
そんな違和感をいだきながら参加していると、お昼休みに入り、僕の席のところにたずねてくる方がいた。
「ご無沙汰しております」
「どうもご無沙汰しております」
何度かお話をしたことのある、Iさんである。
社交辞令の挨拶に来られたのかな、と思ったら、そうではなかった。
「あのう…、たいへん恐縮なのですが、これを見ていただけませんか」
そう言うと、Iさんは箱の中身を見せた。
「これを、調査していただきたいのです」
そうか。調査依頼か。
社交の挨拶はまったくもって苦手な僕だが、そういうことならば俄然会話も弾む。
「わかりました」
箱の中身を見てみたが、やはり調査道具がないと、詳しい結論は出せない。
「調査道具がホテルに置いてありますので、この昼休みにホテルに戻って取ってきます。その後あらためて調査させてください」
そう言って、イタイイタイイタイ!と、例によって両足の裏の痛みに耐えながら、お祭り会場とホテルを往復した。
(それにしても、「今日は極力動かないぞ!」と決めた日に限って、どうしてこれだけ歩く羽目になるのだろう…)
人生とはまことに意地の悪いことの連続である。
午後は業界人祭りのかたわら、依頼された調査に力を入れた。十分な調査とはならなかったが、ひとまず、できる範囲のことをして、調査結果をお伝えした。
「突然のお願いにもかかわらず、ありがとうございました」
「いえ、あまりお役に立てず、すみませんでした」
今回の業界人祭り、このことだけでも、来た甲斐があった。
僕が来ると思って、調査資料を持ってきてくれた人がいたのだ。
というより、調査資料を持ってきて、誰かに調査を依頼しようと思ったら、たまたま僕がいたのを見つけた、というのが本当のところだろう。
そうだとしても、声をかけていただいたのは、ありがたいことである。
…そんなことはともかく、である。
できるだけ体力を温存して省力化をはかろうと考えた今回の出張。
結局は、15日(木)以降、ギッチギチのスケジュールになってしまったではないか!
僕が望んだわけでもないのに、どうして、いつの間にこうなってしまったのか?
いったい誰の仕業なのか?
前にも書いたが、こういうのを、マジシャンズセレクトというんじゃないだろうか。
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コメント
昔、強盗に入られた翌日のスーパーに行ったら、いつもは人気(ひとけ)のない店内に、いろんな扮装をした屈強な男客ばかりが、買い物かご下げて、うろうろしている。
果ては、喫煙所に全員集合して談笑までしているから、わかりやすい。
かように網を張るくらい、犯行現場に犯人は舞い戻るのである。
だから、何度もそこへ行っていたのだな。
もお、住民票とったらどうだい。
ちなみに、そのあたりから山の中に入った所に、南の国から来たおしゃれカフェの日本第1号店があるので、機会があれば是非。
というか「お手柄だ、小林君」と、犯人に言わせたいね。
投稿: 言わせのこぶぎ | 2018年2月23日 (金) 20時06分
このコメントも、疲れていて真意を読み取りにくいのだが、ハンドルネームのところで判断すると、たぶん正解。
投稿: onigawaragonzou | 2018年2月25日 (日) 02時18分
このコメントの意図するところは、以下の四点です。
・「親切なこぶぎさん」とは、もちろん韓国映画「親切なクムジャさん」のもじりである
・そのスーパーは「前の職場」が「前々の職場の町」に出している支店の近くだった(今は別のスーパーに変った)
・今年の帰省帰りに3時間も寄り道して、おしゃれカフェに行ったことを自慢しタイらんど
・僕の住所は「ひかりはなび地区25丁目3番地1-328」なので、遊びに来てね
投稿: 親切なこぶぎさん | 2018年2月25日 (日) 09時51分