ウルトラシリーズ
自分の記憶をたどってみると、リアルタイムでウルトラシリーズを見たのは、「ウルトラマンA(エース)」くらいからではないだろうかと思う。「帰ってきたウルトラマン」以前は、まだ物心がついていなかったので、再放送で見ていたのだろう。
ただ、強烈に印象に残っているのは、ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマンまでで、ウルトラマンA以降は、リアルタイムで見ていたはずなのに、まったく印象が薄い。
最近、ローカル局で、ウルトラシリーズの再放送をあちこちでやっていて、時間があるときにそれを見たりするのだが、その理由が何となくわかってきた。
「ウルトラマンレオ」を見たのだが、これがどうにもおもしろくない。
どうやらコンセプトは「スポ根ドラマ」のようで、ウルトラマンレオ(オオトリゲン)が、怪獣を倒す技を習得するために、師匠であるウルトラセブン〈モロボシダン〉の特訓を受けて成長していく、という物語である。
とにかく毎回毎回、そんな流れなので、見ていて退屈きわまりないのである。
おそらくリアルタイムで見ていた子どもの頃も、同様の理由で、退屈に感じていたのだろうと思われる。
で、今度は「帰ってきたウルトラマン」が放送されているので見てみたら、「毒ガス怪獣出現」という回で、これがすごい内容だった。
毒ガスをまき散らす怪獣が出現。だがその毒ガスの正体は、旧日本軍が戦争中に開発した毒ガス兵器で、それを開発したのが、MATの隊員・岸田〈西田健〉の父だった。
岸田は実家に戻り、父の日記を発見する。そこで岸田は、父が毒ガスを開発したこと、その毒ガスが戦争で使われることがなかったが、処分をするために山中に埋めたことなどが書かれていた。
その毒ガスを体内にためた怪獣が、いま、地球を汚染させているのである。
つまり父が開発した殺人兵器が、怪獣を通じて蘇り、人々を次々と殺しているのである。
岸田は、自分の父がしたことに責任を感じ、一人で怪獣を退治しようと試みる。
…とまあ、こんな感じの話なのだが、およそ子ども向けとはいえない内容である。
しかし、まあ話に引き込まれること引き込まれること。
で、脚本を見たら、金城哲夫だと知って納得した。
あとで調べたら、金城哲夫最後の特撮作品だということだ。
「ウルトラセブン」あたりまでは、やはり戦争を引きずっていた。
子どもにわかろうとわかるまいと、戦争へのメッセージを入れる。
それがウルトラシリーズのフィロソフィーだった。
だが金城哲夫が引退してから、そのフィロソフィーは次第に失われ、子どもの成長というわかりやすいコンセプトに変わっていった。
だがどうだろう。
子どもの頃に強烈な印象を残し、今なお覚えているのは、「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」、そして「帰ってきたウルトラマン」なのだ。実相寺昭雄であり、金城哲夫であり、市川森一だった。
子どもにわかりやすいはずのストーリーは、なぜか頭には残らなかった。
わかりやすい内容は、すぐに忘れられてしまう。
わかりにくくても、フィロソフィーのある作品が、いつまでも印象に残るのである。
…ちょっと、フィロソフィーという言葉が使いたくて、書いてみました。
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コメント
帰マンでは「怪獣使いと少年」を含む所謂「11月の傑作群」が注目されがちですが、
この回を忘れてもらっては困ると思っております。
戦争と言えば金城哲夫と上原正三は沖縄出身ですしね。
よくセブン第42話「ノンマルトの使者」は金城の沖縄戦経験が反映と後世で批評されていますが、当時の円谷プロの人たちは、金城は沖縄戦の経験について普段何も語らなかったし、母親が目の前で足を切断していること等から軽々しく作品に反映するようなことはないと思うとも言っていますけども・・・。
ちなみに上原はセブンの時、薩摩藩による琉球侵攻をモデルに虐げられた者の視点で描いた「300年間の復讐」という脚本を書いたものの監督の意向や予算の問題で製作されませんでした。
NHKで放送された『私が愛したウルトラセブン』(市川森一脚本)の中で一部映像化されていますが、もし製作されていたら確実に名作として語られていたと思います。
とんでもないマニアックな長文を書いてしまいましたが、お許しください。
投稿: 江戸川 | 2018年3月24日 (土) 10時52分
江戸川君のコメントを待っていました!
僕も「11月の傑作群」は当然知っていたのですが、この回はあらためて見て衝撃を受けました。
上原正三も沖縄出身だったんですね。「私が愛したウルトラセブン」はリアルタイムで見ていましたが、そのエピソードは記憶にないなあ。
「私が愛したウルトラセブン」と「ゴールデンボーイズ1960笑売人ブルース」は、市川森一の描く昭和芸能史の傑作脚本なので、ソフト化してほしいものです。
「ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の舟」(TBSテレビ、1989年)は、ちょっといまひとつだったなあ。脚本は佐々木守だったんだけどね。
…江戸川君にだけわかればいいです(笑)。
投稿: onigawaragonzou | 2018年3月25日 (日) 00時28分