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新歓フェス

2011年4月23日(土)の日記。「前の職場」での出来事である。

「来週からの仕事の準備のために、職場に行く。すると外では、新入生を歓迎するための、学生主催の行事が行われていた。主たる目的は、大学のサークル活動を紹介し、新入生を勧誘することのようである。私が学生の時もあったし、私がいた韓国の大学でも、まったく同じ行事があった。

雨にもかかわらず、多くの学生たちが来て、活気づいていた。メイン会場となる舞台の上では、タイムテーブルに合わせて、各サークルが出し物をしている。

窓を開けて、外の様子を聞きながら、仕事をすることにする。すると、お笑いサークルの舞台がはじまった。

3組のお笑いコンビが、ショートコントとか漫才とかをしていたが、「???」という感じである。

その後、建物を出て外を歩いていると、お笑いサークルの前会長だった、Tさんとバッタリ会った。

「お笑いサークル、さっき舞台に出てたね」と言うと、

「す、すいません。昨年はもっと面白かったんです。…それと、2組目のコンビは、舞台に立つと、必ずセリフがとんでしまうんです」

と、こちらが何も言っていないのに、恐縮した感じで私に言う。

「たしかに、セリフがとんでいたね」

「毎回そうなんです」

決められたセリフを毎回必ず忘れてしまうお笑いコンビって、かなり致命的だと思うのだが…。

再び建物の中に入り、窓を開けたまま仕事を続けていると、舞台ではいろいろな催しものが入れ替わり行われている。

なかでも面白かったのは、のど自慢大会である。歌っている学生たちも芸達者だったが、進行する司会者も、じつに「ちゃんと」していた。

余計なことは言わず、テキパキと進行しつつ、それでいて、本来の趣旨であるサークル紹介をきちんと織り交ぜてくる。ちょいとした「大木凡人」である(といっても、このたとえがどのくらい通じるか…)。段取りがちゃんとした司会、というのは、こうも心地よいものか、と、たいへん勉強になった。のど自慢にかぎらず、全体として、司会がちゃんとしていた、というのが、心地よかった。

結局、イベントが終わるまで、窓を開けたまま仕事をしていた。」

翌年、2012年4月7日の日記。

職場に着くと、構内は「新入生歓迎フェスティバル」で賑わっていた。舞台を設営して、さまざまなサークルが出し物をしたり、その周りにはテントを設営して、さまざまなサークルが、新入生にサークルの勧誘をしたりしている。

昨年もたしかこの日に、職場で仕事をしていた。

昨年の日記に、「せっかくなので窓を開けて外の様子を聞きながら仕事をすることにした」と書いたところ、それを読んだ卒業生のSさんが、「窓を開けながら仕事をしたなんて、先生くらいなものですよ。毎年、先生方から『ギャーギャーとうるさい』と、クレームが来るんですから」とメールをくれた。Sさんは学生時代、「新入生歓迎フェスティバル」の実行委員長をつとめていたから、教員からのクレームに頭を悩ませていたのだろう。

そういえば、私が顧問をつとめている、手芸サークルはどうなっているだろう。

構内を歩きまわると、すぐに見つかった。

「あ!先生!」

サークルの新会長の2年生が、看板を持って立っていた。ほかにも数人がいた。

「今年はテント、使わせてもらえたんだねえ」

昨年は、新設のサークルだったためか、テントすら支給されなかったのである

「ええ。でも、とんだ天気になってしまいました。雪が降っているんですよ!」新会長は寒さでふるえていた。

たしか、昨年の「新入生歓迎フェスティバル」も、雨が降っていて寒かったという記憶がある。

「新入生の反応はどうですか?」

「はじまって1時間で、新入生が5人も名前を書いてくれました!今年は手応えありです」

「それはよかった」

サークルの学生は、いずれも私の知らない学生ばかり。たぶん、私の授業も受けたことがないのだろう。1,2度しか会ったことがないから、名前もよくわからない。

だが、看板を見て驚いた。

Photo 「なんだい、これは?」

「これ、先生をイメージして作ったんです。アハハ、そっくりです!」

学生たちは、看板と私の顔をあらためて見くらべて、笑っていた。

学生たちには、私の顔がクマに見えるらしい。

それにしても、かわいらしくていい子たちばかりである。

手芸をする人に悪い人はいないんじゃないか、と錯覚させるくらい、素直な子たちであった」

引用終わり。

そうか、いまは新歓フェスの時期なんだな。

2011年は、震災の影響で新歓フェスの開催日が大幅に遅れたことも思い出した。

だんだん思い出してきたのだが、この新歓フェスの日は、キャンパスで大きな音を出すので、教員の間では「仕事ができない日」と、あまり評判のよくないイベントだった。いまもそうなのだろう。

だが僕は、そういう日だからこそ、窓を開けて、外の音を聞きながら仕事をしていた。というより、外の音を楽しんでいたのである。

そういう感覚だったから、ほかの大半の同僚とウマが合わなかったんだな。

最近は、大林宣彦監督の著作ばかり読み返しているのだが、「生憎(あいにく)の雨」というふうに迷惑がるのは、ずいぶんと雨に失礼な言い方だ、雨は恵みをもたらすことの方が多いのだから、人は雨をこそ楽しむべきなのである、といった内容の文章を、ずいぶん前に読んだことを思い出した。

新歓フェスの日に窓を開けて外の音を楽しんだのは、たぶんこの文章のことが頭の片隅にあったからだと思う。

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コメント

私もあのさざめきは好きでした。
そして今の職場でも、さらにパワーのある賑やかさを楽しんでます。
ただバンドの演奏が始まると、最近はデスメタル系(←わかります?)が多くなってきたのがちょっとアレですが(笑)。

投稿: ひょん | 2018年4月11日 (水) 08時51分

だからひょんさんとはウマが合ったんだ(笑)。

僕もデスメタル系はちょっと(笑)。

投稿: onigawaragonzou | 2018年4月12日 (木) 01時21分

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