映画的体験・おまけ
5月8日(火)
4時間にわたる大林監督へのインタビューが終わり、監督事務所を出たとき、3人は放心状態だった。
「いやあ、すごい4時間でした」
とくに、3人の中でいちばん若い「編者のOさん」は、かなり気分が高揚しているようだ。
「鬼瓦先生のおかげで、いい取材ができました」と感激気味。
「何を言うんです。僕はひと言も言葉を発していませんでしたよ」
実際、僕はでくのぼうだったのだ。
「いえ、鬼瓦先生がいてくれたおかげで、心強かったです」と「出版社のOさん」。
だから、俺は何の役にも立っていないんだってば!
「少しクールダウンしましょう」
と、近くの中華料理屋に入った。
「結局、質問項目はまったく役に立ちませんでしたね」
「ええ。でも取れ高的には十分すぎるほどあります。それに、結果的に、こちらがうかがいたいと思っていたことをお話しいただけましたから、何の問題もありません」と「出版社のOさん」。
そうなのだ。こちらから質問という形ではひと言も発することができなかったけれど、こちらがうかがいたいと思っていたことは、ほぼ語っていただいたのだ。
そればかりではない。
3人それぞれが、「個人的に聞きたい話」をこちらから質問したわけでもないのに、かなり踏み込んだ形でお話しくださったのだ。
僕自身についていえば、僕の個人的な事情について、一切お話ししてはいないのに、「これは知っておいていいことだと思うんだけど…」と、僕を励ますようなお話しをされたのである。
まるで僕自身の抱えている事情をご存じであるかのように、お話になったのである。
こうなるともう、宗教家と信者の関係に近い。
それはともかく、話を戻す。
「問題なのは、この4時間のお話しを、どうやって8000字にまとめるか、ということです」
「たしかに、それは悩ましいですね」
映画でいえば、撮影した素材を編集する、という作業が必要になる。
そういえば、大林監督が4時間お話になった一番最後に、
「素材は提供しましたから。あとは編集にお任せします。映画でも、編集というのがいちばん大事ですからね」
とおっしゃっていた。編集のプロである大林監督にダメ出しをされないような編集をしなければならない。
文字起こしは、「出版社のOさん」が担当することになった。
「私が4時間のお話しの中から取捨選択して、文字の荒起こしをしますので、Oさんと鬼瓦先生とで、加筆修正をお願いします」
翌日の夜、「出版社のOさん」から、文字の荒起こししたものが送られてきた。
仕事早っ!と思いながら、娘が寝静まったのを見はからって、編集作業を開始する。
もう一度音源を全部聞き直し、「出版社のOさん」が文字起こししなかった箇所で、大事だと思われる箇所をあらためて文字に起こし、それを付け加える。
お話になった順番どおりに並べるのではなく、順番を適宜入れ替えて、内容をわかりやすくしたり、ストーリー性をもたせたりする。
わかりにくいところは、適宜言葉を補う。
教員稼業をついていたころ、学生の文章を添削したり推敲したりする仕事ばかりしていたので、ついそのときの癖で、「編者のOさん」の文章を卒論指導よろしく添削してしまったり。
それはともかく。
まるで、撮影した映像素材をもとに、映画の編集作業をしているような楽しさである。
なるほど、映画の編集って、こんなに楽しいものなのか。
何度も3人で議論しながら推敲を重ね、本日(5月13日)、ようやく決定稿が完成した。
インタビューから1週間経たずして完成したのは、3人の熱量によるものであろう。
さて、その編集がうまくいったのかどうかは、読者に判断をゆだねるしかない。
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