借りてきた猫
熱中症になりそうな暑さである。
娘を、近所のコミュニティーセンターに連れていく。午前中、「ひよこランド」といって、1歳児までの子どもが遊べるスペースがあるのだ。
小体育館みたいなところに、子どもが自由に遊べるスペースを作ってあるのだが、遊ぶっていったって、1歳児未満の子どもたちばかりなので、ほとんどが寝っ転がっている。
そういうところに連れていくと、娘はほとんど何も喋らない。家では、派手に寝返りを打ったり、明石家さんまのような「引き笑い」を繰り返したり、お腹を太鼓代わりにして両腕でポンポン叩いたりするのだが、周りに他人がいると、すっかりと黙りを決め込んでしまうようなのである。
よくあること、と言ってしまえばそれまでなのだが、この性格、誰かに似ているなあと考えていたら、思い出した。
死んだばあさんだ!
子どもの頃に同居していた父方の祖母は、僕が二十歳のときに90歳くらいでこの世を去ったのだが、晩年はうちの地区の「文化センター」の老人クラブみたいなところに、毎日通っていた。ま、「ひよこランド」の高齢者バージョン、いった感じの寄合といったらよいか。
うちのばあさんは、老人クラブに毎日通っているにもかかわらず、借りてきた猫のように、ひと言も喋らなかったらしい。
「おたくのおばあさん、おとなしいわねえ。老人クラブでは、ずっと黙っているのよ」と、子どもの頃、言われたことがある。
僕はそのことが信じられなかった。
だって、家ではものすごい気性が激しいばあさんだったんだぜ。すごい剣幕で、僕を怒ったりするのだ。
なんてったって、趣味はプロレス観戦だもん。金曜日と土曜日の夜8時は、ばあさんがチャンネル権を独占していて、まるで自分がプロレスをしているがごとく、叫ぶのである。
だから、外に出るとおとなしい、というのが信じられなかったのだ。
…娘を見て、そのことを思い出した。
ひょっとして娘も、死んだばあさんのように「外では借りてきた猫、家では気性の激しい内弁慶」という性格になるのだろうか。
うーむ。要注意である。
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