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Keiさん・その2

高校時代は、3年間クラス替えがなかった。

担任の先生も3年間同じだった。うちのクラスは、N先生で、僕たちはN先生の名前をとって、「Keiさん」と呼んでいた。教師を「先生」と呼ばず、「さん」で呼ぶのが、自由な校風であるこの高校の習わしだったのである。

Keiさんについては、以前、長い思い出話を書いたことがある。

Keiさん

Keiさんは、僕にとって、教師のお手本のような人で、教員稼業をしていたとき、Keiさんのような教師でありたいと思い続けた。

…という話は、前に書いた。

いまではとんとお目にかかる機会がなく、年賀状のやりとりだけを続けている。

先日僕が出した本を、出版社を通じてKeiさんにお送りしたら、今日、メールで返信をいただいた。

「鬼瓦くん、面白いよ、この本!!、ありがとう、本当にありがとうございます」

という書き出しではじまり、本にまつわる感想と、Keiさんの近況が綴られていた。

僕にとっては、Keiさんに面白いと言ってもらえれば、あとは誰に何と言われようと関係ない。少し気持ちが軽くなった。

で、調子に乗った僕は、Keiさんへの返信に、もう一つの本のことを書いた。

「実はもう1冊、最近出した本があります。短い文章を寄せただけですが。

戦時中、マーシャル諸島で餓死した一人の日本兵が、死の直前まで日記を書き残しており、その日記が奇跡的に戦後、遺族のもとに届けられました。その日記をめぐるさまざまな人の関わりを本にしたものです。私も、日記の解読を少しだけお手伝いして、そのときの様子を文章に書きました。

とても面白い本です。もしご関心があれば、お送りしたいと思います。

またそれに関連して、ドキュメンタリー映画が、9月29日(土)より都内でロードショー公開されます。

戦場で餓死した父の最期の地・マーシャル諸島を、74歳になる息子さんが訪ねるというドキュメンタリー映画です。

私もコメントを寄せています。お時間があればぜひ見に来てください。私も、上映期間中の10月3日(水)、上映後のトークイベントに出演することになりました!」

すると、それからほどなくして、Keiさんから返信が来た。

「鬼瓦くん

刺激がいっぱいで興奮してしまうよ、嬉しい!

本、是非読みたい!送ってくれますか。

2011年3月東北地震と福島原発事故のあと、友人たちと話していた時、40年ほど前からの友人である写真家のSさんがそばにいたので、「なあみんな、ここにいるSさんの体験を活用して、マーシャルの人たちとの交流をやろうよ」と呼びかけたところ、全員が賛同してくれて、さっそくプロジェクトを立ち上げ、マーシャル諸島の人たちと情報交換をやっています。残念ながら私は耳が悪くて飛行機には乗れないので現地には行ってないのですが、マーシャルの人たち(ロンゲラップにいて被爆し、アメリカの言いなりになって移動し、今はマジュロに住んでいる)は貧しい生活の中から福島の人たちにと言ってかなりの額の寄付金を我々に託してくれた。

映画はもちろん見に行きます。プロジェクトの仲間たちもたくさん行くと思います。

私は10月3日に行きます。これはワクワクの楽しみです。」

なんと!こんなことって、あるんだねえ。

まさか、自分が高校時代に尊敬していた担任の先生が、マーシャル諸島に関わる活動をしていたとは、驚きである。

この国ではほとんど注目されることのない「マーシャル諸島」が、ふたたび、僕とKeiさんを結びつけたのである。

人間、どこでどうつながっているか、わからない。

こういうことがあるから、生きることがやめられないのだ。

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