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優雅な生活

もう1年以上、お酒を飲んでいない。

できるだけ飲み会には参加しないことにして、やむを得ず参加する場合でも、ソフトドリンクで対応する。

ま、それでとくに不自由しているわけではないので、おそらくしばらくは、このままお酒を飲まずに過ごすことになるだろう。

家に置いてある古い日本酒は、酢になるまで置いておくつもりである。

ごくたまーに、グループLINEとか、グループMessengerみたいなところから、高校時代に同じクラスだった人たちや、同じ部活だった人たちから、飲み会の誘いを受けることがある。

で、そこには近況報告が書かれていたりするのだが、

「単身赴任先でも、毎日グダグダ飲んでます!」

とか、

「今日も明日も飲み会です!」

みたいなことが書かれていて、サラリーマンって、すげえなあって、思ってしまう。もちろん、サラリーマンということで、一括してとらえてはいけないことはわかっているのだが、まあここは、辛抱して聞いてください。

僕はサラリーマンの経験がないので、いったいサラリーマンというのは、ふだんどういう日々を過ごしているのかについて、非常に関心がある。

僕の父はしがないサラリーマンだったが、友だちがいなかったせいで、仕事が終わるとまっすぐ家に帰り、家で一人で晩酌していた。

だから父の事例は参考にならない。

山口瞳原作・岡本喜八監督の映画「江分利満氏の優雅な生活」、ずいぶんむかしの映画だけれども、主人公のサラリーマン(小林桂樹)は、毎日毎日、外でぐでんぐでんになるまでお酒を飲んでいる。してみると、いまのサラリーマンも、江分利満氏のころとまったく変わらず、毎日毎日、外で酒を飲むという、優雅な生活を送っているのだろうか。

素朴な疑問だが、よく、お金と体力が持つよなあ、と思う。

「サラリーマンの日常なんて、つまんないものだよ」

と、サラリーマンの友人は言うが、仕事が終わってから、羽根を伸ばしてお酒を飲みに行けるんだから、うらやましいといえば、うらやましい。

それに、一緒に飲みに行く相手がいる、ということでもあるのだ。

僕のように偏屈で友達のいない人間には、とうていできないことである。

「つきあいで飲みに行かされることも多いのだから、楽しく飲める日ばかりではない」

と、サラリーマンの友人は言うが、それもたしかにそうなのだろう。

サラリーマンの優雅な生活に関心がある、と書いたが、といって、そういう人たちとお酒の席をともにしたい、とは思わない。

なんとか、酒席をともにせずして、サラリーマンの毎日のアフターファイブ(死語)を知る方法はないものか。

バーチャル・サラリーマン・アフターファイブを、いちど、体験してみたいのである。

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