理想の図書館
「前の職場」の教え子だった卒業生のMさんから、実に久しぶりにメールが来た。
メールが来たっていうか、私の本の宣伝するために、久しぶりにこちらからMさんにメールしたら、返信をいただいたというわけである。
Mさんは本が大好きで、いまは司書としてある地方都市の図書館に勤めている。その図書館に、私の本を入れてもらおうと思い、厚かましくもお願いのメールを出したのである。
いただいた返信には、次のようにあった。
「先生のブログで、図書館の記事を拝見しました。私の勤務する図書館の書架をぜひ見ていただきたいです。毎週、尊敬する先輩方と一緒にしっかり検討して購入している本たちです。
そして、私自身司書として日々利用者の方々に育てていただいているという実感があります。自動貸出機も自動返却ボックスもありませんが、これからも血の通ったサービスに努めていきます。 (レファレンスでは、特に郷土資料担当の頃には先生に教えていただいたことを生かせる場面もあり嬉しくなりました。)
先生のおっしゃることがまさに私の思いと一緒だったのでつい、メールさせていただいてしまいました。とはいえまだまだ未熟者です。精進します!」
はて、図書館の記事って、何か書いたっけな?と思って必死に思い出したら、
「未来図書館」
という記事のことだった。
自分が体験したことを、深く考えずに書いた文章だったが、図書館に勤めるMさんは、このなんでもない文章を心にとめてくれたようである。
僕にとっての理想の図書館は、本のソムリエみたいな人たちが、吟味に吟味を重ねた「読みたくなる本」を選んで、それを図書館に配架する。
本のソムリエ、といっても、「この本がおすすめです!」とかなんとか、上から目線でピンポイントに本を薦めるのではなく、自分たちが自信を持って薦められる本をできるだけ数多く選んで、それをさりげなく、本棚に並べてもらう。
で、その図書館を訪れた人たちが、その本棚を見渡しながら、自分の読みたい本を決めていく。
「へえ~、こんな本があるのか~」
「この本もいいなあ~」
とかなんとか言いながら、いままでに出会ったことのない本に出会う。
そんな図書館があったら、時間を忘れて過ごせるだろう。
そんなの、どこの図書館でもやってることじゃん、と思われるかも知れないが、さにあらず。
時間を忘れて過ごしたいと思う図書館もあれば、早く立ち去りたいと思ってしまう図書館もあるのだ。
もっといえば、同じ本でも、借りたくなるように並んでいる図書館もあれば、借りたいと思わないような並び方をしている図書館もあったりするのだ。
本屋さんも同じである。
ベストセラーとか新刊本ばかり並んでいる本屋さんは、僕にとってはあんまり魅力がない。あまり買う気も起こらない。
その一方で、時間を忘れて入り浸ってしまうような本屋さんもある。
京都にある、K社I店が、まさにそうである。
また、最近訪れた、下北沢のとあるビルの地下にある本屋さん。
すごく狭い店なのだが、ここもまた本の品揃えがとても面白くて、
「へえ、こんな本が出てるのか~」
と、時間を忘れて本を見入ってしまうほどである。
同じ本でも、買う気にさせる本屋さんと、買う気にならない本屋さんがあるから不思議である。
もっとも、これは僕の個人的な趣味にすぎないが。
まあそんなことはともかく、いつか出張の機会があったら、時間を見つけて、Mさんの勤める図書館を訪れてみよう。
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