トークイベントの日
10月3日(水)
いよいよ、ドキュメンタリー映画のトークイベントに登壇する日である。
平日の昼間ということで、お客さんがほとんど来ないんじゃないかと心配した。
監督のOさんに聞くと、
「事前のWeb購入を見ると、けっこう席が埋まっているみたいです」
という。
「きっと、鬼瓦先生のファンの方が多くいらっしゃるんじゃないでしょうか」
というので、
「ファンなんかいませんよ」
と言った。
映画の上映は13時からで、トークイベントは、上映が終わった14時35分からである。
「終わりは何時までですか?」
「劇場の人に聞いたら、3時には必ず終わるように、とのことでした」
ということは、実質25分か。
これまでの経験だと、25分というのは、あっという間である。
「今日は司会の人が急遽来られなくなったので、私と鬼瓦先生の二人で対談という形式になります」とOさん。
簡単な打ち合わせを済ませたあと、いよいよトークイベントの開始である。
2時35分。映画の上映が終わり、お客さんのいるスクリーンの前に立った。
客席のほうを見て、すぐに目が合ったのは、高校時代の恩師、Keiさんだった。
約束どおり、Keiさんは見に来てくれたのだな。
それから客席を見渡してみたら…
知り合いが、だれもいねえ!!!
だれひとり、知り合いが来てねえ!!!
とーもーだーちーがーいーなーいー♪ことが露呈された!
Oさんが小声で私に言った。
「客席がけっこう埋まってますね。鬼瓦先生のファンの方々ですね」
「いえ、高校の恩師が来ているほかは、知り合いはひとりもいません」
「えっ?!そうなんですか…」
もう、完全に意気消沈ですよ。
俺自身に、まったく集客力がないことがあらためて証明された!
気を取り直して、トークイベントを始める。
僕がこの映画に関わった経緯や、映画を見ての感想などを喋ったのだが、気がつくと、自分ばかり喋ってしまっていた。
待てよ、と。
考えてみれば、映画を見に来たお客さんは、毎回トークイベントを聞きに来ているわけではない。初めて来たお客さんばかりなのだから、俺の話なんかより、監督の話を聞きたかったんじゃないだろうか。
そう思うと、自分ばかり喋りすぎてしまったことに、ひどく落ち込んでしまった。
あっという間に25分のトークイベントが終わり、会場の外で、ひさしぶりに高校の恩師・Keiさんとお話しした。
「いやあ、面白かった。本当に面白かった」
Keiさんはかなり興奮した様子で、ニコニコしながら僕に語りかけた。
「不思議なつながりがあるもんだねえ」
Keiさんもまた、映画の舞台となった南の島と関わりを持つ活動をしていたことは、僕にとっても本当に驚きだった。
しばしそのことで盛り上がったあと、Keiさんは言った。
「あなたのお父さんも、昭和16年生まれ?」
「そうです」
「びっくりだなあ。俺も昭和16年生まれなんだよ」
「そうだったんですか!!」
実は高校時代からいままで、Keiさんの年齢を知らなかった。まさか僕の父と同い年だったとは!
昨年、父が死んで喪中のはがきをKeiさんに出したときに、自分と同じ年齢だということがわかったという。
「ツトムさんも昭和16年生まれですよ!」
映画の主人公、ツトムさんも Keiさんや僕の父と同い年なのだ。
「そうなんだってねえ。それもまたビックリしちゃった。それで、ぜひ、ツトムさんにも会いたいと思ってねえ」
「ええ」
「こんどの土曜日にツトムさんがトークイベントのゲストで来るでしょう。そのときにまたここに来ます」
「そうですか。じゃあ、僕もご一緒しますよ」
同い年のツトムさんとKeiさんの初対面の瞬間に、僕も立ち会うことにした。
Keiさんはそのあと、監督のOさんにも、映画を見た感激を興奮した様子でお話しされていた。
最後に、Keiさんから名刺をいただいた。
そこには、「肩書きなし素浪人」と書かれていた。
肩書きなし素浪人、か。Keiさんらしい言い方だ。
いつか自分も、そんなふうに名乗ってみたい。
知り合いはだれひとり来なかったけれど、Keiさんに喜んでもらったから、よしとしよう。
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コメント
あのう、ボヤイテいる割には、SNSの写真ではご満悦のご様子なんですが。
O林ネタをやりきった感が伝わってきます。
ぜひ、来年のドキュメント映画祭に出品した折りに、上映後のティーチ・インのゲストとしてお越し下さい。
ま、それでも知り合いの客はタリナイかも。
投稿: こぶぎ書林 | 2018年10月 4日 (木) 09時04分