1周忌
11月14日(水)
父の命日は11月15日なのだが、この日はどうしても仕事があるので、14日に1周忌の法事を行うことになった。
毎年この時期、妹は「遅い夏休み」をとる。
この夏休みを利用して、妹と両親は国内旅行に出かけていたのが年中行事になっていたのだが、昨年は父の死によりそれが叶わなくなった。そして今年は、妹と母の2人で、法事の前に1泊2日の旅行に出かけた。
今年の旅行先は、函館だったという。
「函館空港でね、すしざんまいの社長を見かけたのよ」
と母が言った。
「すしざんまいの社長?」
「知らないの?」
「いや、知ってるよ。知ってるけども、いつもマグロと一緒に写真に写っているオジサンだろ?」
「そう」
「よくすしざんまいの社長だってわかったね。マグロと一緒にいればわかるかも知れないけど、オジサン単体だったら、社長だなんてわかんないよ!」
「でも、顔が明らかにすしざんまいの社長だったよ。あれは、買いつけに来たんだね、おそらく」
何というか、母らしい。
母は、そういう「微妙な有名人」を見つけるのが、得意なのである。
「いつだったかもほら、旅行先で、崔洋一監督を見かけたのよ」
これもまた「微妙な有名人」である。
これを聞いていた妻が僕に言った。
「やっぱり血筋だね」
「なんで?」
「だって、前に出張先のホテルで俳優の柄本佑を見たって言ったでしょう?」
「そうだよ」
「ふつう、わかんないよ。柄本佑って言われて、すぐに顔が思い浮かばないもん」
「そんなもんだろうか」
なるほど、僕が旅先で「微妙な有名人」を見かけるのは、母親譲りということなんだな。
そうそう、それで思い出した。
先日のこぶぎさんたちとのオフ会で、そのことが話題になった。
「あのホテルにいたのは、柄本佑ではなく、どっかの番組のADだよ」
とこぶぎさんが言う。
「だいたい、柄本佑クラスの中堅どころの俳優が、ホテルの朝食の時に、台本を読み直すなんてあり得ない。あのクラスの俳優になると、もう台本なんて頭の中に入っているもんだ」
「そういうもんだろうか」
「そうだよ。SNSを駆使して、その日の柄本佑の動向を調べてみたが、鬼瓦さんの出張先でロケをしているという事実は、ついにつかめなかった。その代わりに、同じ日に、さまーずがその地でロケをしていることがわかった」
「そうだったの?」
「そう。ということは、そのホテルにいた人は、さまーずの番組のADだった可能性が高い」
「うーん。でも、顔は明らかに柄本佑だったんだよなあ」
なにしろ、柄本佑のデビュー作の映画「美しい夏キリシマ」から見ているんだから、間違えるはずはないのだ。
はたして、母親譲りの「微妙な有名人」を見つける僕の才能に軍配が上がるのか、それともこぶぎさんのたぐいまれなるアームチェア・ディテクティブぶりに軍配が上がるのか。
真相は藪の中である。
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コメント
SNSのつぶやきで検索すると、この日、社長は少なくとも東京と京都に出没し、バスの隣席や教室の中にいるのみならず、はては英検の面接官までしている。
これでは「すしざんまい」でなくて、「社長ざんまい」ではないか。
世の中には、かほどに「社長似」の人が多いのか。
あるいは影武者か、分身の術か。
この真相もまた、藪の中である。
投稿: つぶやくこぶぎ | 2018年11月16日 (金) 18時46分