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やんごとない場所へ

11月26日(月)

前日の夕方、職場での休日出勤を終えて、その足で東京駅に向かい、西に向かう新幹線に乗った。翌日は1日、調査なのである。

三連休の最終日ということもあって、夕方に東京駅に着くと、バッカみたいに混んでいて、新幹線ものきなみ満席である。

やっとのことで切符を買い、目的の町に着いたのは午後10時近くになっていた。

まったく、疲れるねえ。

翌朝9時。研究仲間のFさん、Oさんと待ち合わせて、午前中の調査場所に行く。

そもそも今回の調査は、FさんとOさんがすべて調整してくれたもので、僕はただ、2人にくっついていくだけである。

僕がいたところで、何の役にも立たないのだが、いちおう先様に対しては僕がいた方が形になるから、という理由で、同行することになったのである。

今日はまる1日、「古い乗り物」について調査することになっている。

鉄ヲタどころではないぞ。もっとマニアックな乗り物である!

午前中の調査先は、「やんごとない場所」である。

Fさんが段取りを組んでくれて、「やんごとない場所」で調査できる運びとなった。

「やんごとない場所」なので、とくに失礼がないように、気を遣わなければならない。

調査場所として案内されたのは、ふだんならば絶対に入ることができない「やんごとない建物」だった。特別のご配慮をいただいて入らせてもらうことができたのである。古くて大きな建物である。

「やんごとない場所」にある「やんごとない建物」には、蛍光灯といった照明器具はないのがふつうである。だから昼間でも薄暗い。だがこの建物のみは、なぜか蛍光灯がついている。

「この建物は、ときおり『やんごとないお方』が調べごとにいらっしゃるので、そのときのために特別に蛍光灯をつけているのです」

「なるほど、そうなんですか」

その話を聞いて、さらに緊張感が高まる。

朝9時から12時までの3時間、「やんごとない建物」の中で「やんごとない乗り物」の調査をさせていただいた。超マニアックな調査のために、これほどの時間をいただけたのは、ありがたいことであった。僕たちは先様に御礼を申し上げて、「やんごとない場所」をあとにした。

気がつくと、冷え冷えとした建物の中で、休みもとらず、立ちっぱなしで調査をしていたこともあって、体がガッチガチである。しかし、午後には別の場所での調査がある。

慌ただしく昼食をとった後、今度は地下鉄を乗り継いで、町の東のはずれにある「大きなお寺」に向かう。

ここにも「古い乗り物」が現存している、ということで、Oさんが段取りを組んでくれた。

ここもふつうは、とても敷居の高い場所なのだが、偶然にもOさんのお知り合いの方がいるということで、その方を通じて、間近で見せていただくことが可能になったのであった。

再び、超マニアックな調査がはじまる。先様にご配慮いただき、間近でじっくりと観察することができた。

「これを、こんなにじっくりご覧いただいたお方は、初めてですわ」

「そうですか」

「これと似たようなものなら、ほかにもおますよ」

「そうなんですか?!」

先様に案内され、別の建物に入れてもらった。

「こちらです」

天井のほうを見上げると、目的の「古い乗り物」があった。

「なるほど、これはすごい」

しばらくの間、天井のほうを見上げて、じっくりと観察した。

「ほかにもどこかにあったと思うなあ…。ちょっと聞いてみますわ」

しばらくして、

「うちの敷地に、建物の部材の簡単な修理なんかをするための作業場があるんですが、そこにも何台かあるようです」

という情報が入ったので、作業場にいって見せてもらうことにした。

やはり天井からつり下げられた状態で、何台かあった。

「なるほど。こちらにあるものは、特別なときに使う乗り物というよりは、日常的な乗り物のようですね」

「そうですか。たしかに、さっき見ていただいたものとは違いますね」

そんな会話をしていると、この作業場をとりしきる棟梁?みたいな方が丁寧に説明してくれた。

「あそこに、竹で編んだ駕籠がぶら下がっているでしょう?」

「ええ」

「あれ、ミヤコ蝶々さんがお乗りになった駕籠です」

「そうなんですか?」

「ええ。先代の棟梁が担ぎはったそうです」

「なるほど…。僕らがさがしている乗り物とは違いますが、これはこれですごく価値がありますね」

本来目的としている調査よりも、横道にそれたおかげで全然関係のない事実がわかったりすることが、こうした調査の醍醐味でもあるのだ。

そうこうしているうちに、夕方になってしまった。

先様のご配慮に感謝申し上げ、「大きなお寺」をあとにした。

「今日はずいぶんと多くの『古い乗り物』を観察できましたね」

「1日でこれだけの数の『古い乗り物』を見たのは、世界で我々だけではないですか?きっとギネスブックに登録されますよ」

たしかに、すげー地味で、すげーマニアックな調査だった。

たぶん、こんな地味でこんなマニアックな調査をしているのは、世界でも我々だけだろうと思うと、それもまたゾクゾクする。

その代わり、午後も立ちっぱなしで調査をしたので、体がガッチガチである。

帰りの新幹線では、爆睡した。

ガッチガチになった体をほぐす方法は、ないものか。

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コメント

乗り物を調べに来るやんごとなき方…
やんごとないレベルが高すぎますね。
この方が交通史に興味を持った理由に、何かやんごとなき方なりの大変さが感じられてなりません。

乗り物は
和将棋で自陣左端の駒。
でしょうか。

投稿: 江戸川 | 2018年11月27日 (火) 07時51分

ガチガチになった体をほぐすには、腰を揉んでもらうのが醍醐味かなあ。

時間に剰余があれば、マッサージチェアなんかいかが。

滑車みたいなやつがついてるのに乗れば、思わず「オー、車が腰ぃ~」と唸っちゃうかも。

清涼感一杯だなあ。

今日からどうですか。

なお、「ミヤコ蝶々」の「ミヤコ」もクイズのヒントだったのかについて、ほうれん・そうよろしく。

投稿: 健康こぶぎ | 2018年11月27日 (火) 17時29分

江戸川君、惜しい!乗り物は不正解。

こぶぎさん、…ちょっと恐くなってきたので、この記事は非公開にしようかと(笑)
素朴な疑問なのですが、明智こぶ郎探偵は、いつも1人で推理しているのですか?それとも助手の小林君と一緒に推理することもあるんですか?

投稿: onigawaragonzou | 2018年11月27日 (火) 23時56分

助手の小林です。

推理は先生がお一人で考えておられますよ。

というか、僕自身も先生の脳内ファンタジーの作品に過ぎないので、

明智先生の意のままに、こうやって喋っているんです。

実際の僕は、夕食時の話題が一段落した時に、スマホで吹きだまりブログを読むのですが、そこで初めて先生のコメントも目にすることが多いです。

例えば昨日の夕飯では、落語「文七元結」の身投げシーンを説得力あるものにするには、どのような演出がよいかといった話や、

映画じゃないが、そのカメラはさすがに止めた方がいいだろ、といった話題で盛り上がった後、

ネスカフェあたりの記事から読み出しましたね。

でも、先生がご自分の推理について勝手に解説しているので、調べている振りをしてスマホばかりいじっていました(ヒヒヒ)。

あと、先生が徹夜で仕上げて公開した、LOVELYZの大論文ブログの話に一切乗ってあげなかったので、しょげてましたね。

投稿: 助手の小林君 | 2018年11月28日 (水) 01時01分

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