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告発の行方

12月2日(日)

都内で開かれた職場主催の会合に出席する。

朝9時から夕方5時半までの、長丁場である。

今回は自分が喋るのではなく、座って聞いていればいいだけである。しかも自分の専門とは異なる分野の話なので、気軽に勉強するつもりで参加した。

会合でのお話を聞きながら懸案の原稿の内職でもしようかなあと思っていたのだが、いざ話を聞いてみると、それぞれの話が濃密でおもしろく、脳の処理速度が追いつかず、とても内職どころではなかった。

お昼休みとか、合間の15分の休憩時間などを利用して、懸案の原稿にとりくみ、ほぼ、完成の目処がついた。やれやれ。

おかげで、今日一日は、頭がフル回転で、すっかり疲れ切ってしまった。

印象深かった話を一つだけ。

江戸時代の終わり頃のことである。新吉原の遊郭で放火事件が起こった。犯人は、そこにつとめる遊女たちである。彼女たちは、劣悪な待遇に耐えかねて、結託して遊郭の放火を決行したのである。

事件に関与した遊女たちは逮捕され、さっそく取り調べがはじまる。彼女たちは、自分たちの置かれた環境がいかに劣悪であったかを、ときには口頭で、ときには覚え書きという形で奉行に訴えた。これによって遊女屋経営者の悪辣な搾取の実態が明らかになり、放火に関わった遊女だけが一方的に罰せられたのではなく、悪徳経営者も遠島の刑に処せられたのであった。

この話を聞いて、僕は思った。

そのときの遊女たちの言葉が、いまも残っている。それを読むと、話し言葉をそのまま記したような稚拙な表現である分、リアルに胸に迫り、切々と私たちの心に訴えかけてくる。

ならば、なぜ最初から、正当な手段で経営者の暴力を訴えなかったのだろうか。彼女たちが力を合わせ、彼女たち自身の言葉で訴えれば、その訴えは奉行の心を動かし、悪徳経営者を罰することができたのではないだろうか。

答えは、否である。

幕府の保護を受けていた遊女屋経営者の悪辣さを幕府に訴えたところで、まともに取り扱ってくれないことを、彼女たちは身に染みて知っていたのではないだろうか。

だから、放火という非合法な手段でしか告発することができなかったのである。

僕はこういうときいつも、山本周五郎の『樅の木は残った』の一節を思い出す。

幕府の陰謀を告発すべきだという仲間の助言に対して、主人公の原田甲斐が

「それではどこへどう告発すればよいのだ。どこへだ?どこの誰に告発すればよいのだ?」

と嘆く場面である。

権力に不当な圧力をかけられたとき、人は、どこへどう告発すればよいのだろうか。

誰か、教えてほしい。

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コメント

招集! 緊急オフ会議

(とんとん)

これはこれは、パワード・吹きだまらーがお二人もいらっしゃって... 一体、どうしましたか?

鬼瓦さんは本当に「祝・まる10年!ベストオブベストエピソード大賞!」、やりたいんですかねえ?

ええ。こちらのコメントには全く反応しませんけど、たぶんそうだと思います。

でも、過去記事をどうやって調べればいいんですか?

韓国留学時代の話は、ページ左脇にリンクがありますが、帰国後の話はブログページの末尾にある「後戻りリンク」で、一話一話、逆戻って閲覧していかなくてはいけません。

(著者注:さきほどのオフ会では「過去記事はカレンダーから辿れる」と言いましたが、その月の間だけしか辿れませんでした。みやなむにだ)

後は、記憶を頼りに「グーグル検索」で探すんですかねえ。

たかだか一人の文章を探すのに、世界中から集まった天文学的数量のコンテンツの中から探し出させようというのは、一体どういう了見だか。

せっかく「エピソード大賞」に参加しようという、天文学的に奇特な人が現れたのにねえ。

一体、こういうことをどうしたら訴えられるんですか。やっぱり、コメントに書かないとだめなんですかねえ。

コメントに書き込まなくても、直接本人にメールすれば、あちらで本文記事に、全文引用して書いてくれますよ。

「福岡のコバヤシさん」方式ですね。

ついでに、鬼瓦さんに自分でサイコロを振ってもらって、年・月・日をランダムに決めさせて、過去記事から200本も無作為抽出してブログに再掲載してもらえれば、「鬼瓦ブログ」全体の正確な縮図が描けますよ。

世論調査のサンプリングかよ。

とんだ「サイコロの旅」だこと。

でも、鬼瓦さんの記事の中では、ご自分の過去記事にリンクを貼っていますけど。

ココログの作者は、作者専用ページで自分の記事一覧リストを見ることができるんです。そこで探しているんでしょう。

それじゃ、その記事タイトル一覧をアップしてもらえば、いいんじゃないですか。

データさえ入手できれば、ビックデータを解析する統計手法が使えますので、なんとでもなります。

たとえHTMLファイルの形であっても、あれば処理しやすいですし。

もはや「処理」という表現になりましたね。

それにしても「告発の行方」が、まさかご自身に向かうとは、今朝方、ブログを書いた時点では、当のご本人も思わなかったことでしょう。

では、これにて散会。


といったようなコメントで、帰りの長距離通勤の電車の中もお楽しみください。

投稿: 招集こぶぎ | 2018年12月 3日 (月) 15時56分

先ほど「高校時代の友人・元福岡のコバヤシ」から「こぶぎさんが、私のメールばかりブログに載せて貰って、自分のコメントには返事を貰えない=構って貰えない!とかなり僻んでいるのではないかと心配です。少しでも良いので、こぶぎさんのコメントに返信してあげてください」というメールが来ました。

「祝・まる10年!ベストオブベストエピソード大賞!」は、本気でやるつもりで、募集しているのですが、いまだにだれからも応募が来ません。そこで名称を、「祝・まる10年!神回エピソード大賞」に変更します。

こぶぎさんの言うように、ページの左枠にバックナンバーのリンクを貼りたいのですが、作業がおそろしく面倒なので、やる気が起きません。

ちなみに僕自身が記事を書くときに過去の記事を引用することがありますが、すべて記憶をたよりに探し出しています。

投稿: onigawaragonzou | 2018年12月 6日 (木) 00時31分

こちらは先週の木曜日から突如「古新聞を捨てるな」的研究に着手する羽目に陥ったために忙しくなっただけで、

リアクションがなくてもひがんでいませんからご安心下さい、とコバヤシさんにメールでお伝え下さい。

で、今回は、私め以外にエピソード大賞に応募しようとしている人がいるから、一大事なのですよ。

どこかのラジオ局みたいに、神回ウィーク禁止令でも出すわけにもいかないので、

そこで私めも秘策を考えまして、近々乙女旅の方で、号外として、世界に向けて発信します。

それにしても最近、乙女旅は号外ばかりで、もったいないなあ。

というか、「号外がそのうち出る」って、それは号外なのか?

あと、私めは天津といえば甘栗です。

ちなみに、次の記事の三橋コメントは私めのイタズラではなく、マジホンのようですよ。

投稿: まとめてリアクションこぶぎ | 2018年12月 8日 (土) 09時01分

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