午後2時46分
3月11日(月)
今年のこの日の、午後2時46分は、職場にいた。
いよいよ来週の火曜日、職場の第1店舗が新装開店するのだが、開店準備のために、ディスプレイの作業が大詰めを迎えていた。
壁に作り付けてあるケースの中に、モノを並べなければいけないのだが、太っている僕を見かねた同僚が、
「僕が入って並べましょう」
と言ってくれた。
「すみません」
ケースの中は、かなり狭い。すでに並んでいるほかのモノを踏んづけないように、時に中腰になり、時にヤンキー座りして、慎重に並べていかなければならない。並んでいるモノを踏んづけないようにするためには、かなりアクロバティックな足の置き方をしなければならないのである。
(体勢が厳しそうだなあ…)
ケースの外側から、同僚がモノを並べている姿を見届けていると、
「まもなく午後2時46分になります。黙祷をお願いいたします」
という放送が流れた。
「この体勢で黙祷かぁ…」
同僚はかなりつらそうだった。なにしろ、狭いケースの中で、足の踏み場に注意しながら、かなり歪んだ姿勢でヤンキー座りをしているからである。
「黙祷!」
同僚はそのままの体勢で、1分間黙祷を続けた。
あらかじめ時間がわかっていれば、作業の時間をずらして黙祷をしたのだろうけれど、いまの僕たちにはそんな余裕などなかった。
あの日だってそうだったはずだ。
あらかじめ時間がわかっているなんてことは、なかったのだ。
あの日、今日の同僚と同じように、狭いケースの中で、足の踏み場に注意しながら、ディスプレイをしていた人だって、いただろう。
ふと、あの日と同じことが、いま起こったら、どうなるのだろうと思い、少し恐くなった。
来年のこの日の午後2時46分は、どこで何をしているだろう。
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