開幕式
3月18日(月)
前日(日曜日)の夕方、ギリギリに納品されたものを並べ終わり、なんとか開幕式に間に合った。
そしていよいよ開幕式当日。
僕の役目は、韓国からいらしたVIPをアテンドすることである。
韓国からは4人の社長と、そのそれぞれに随行員が一人ずつ付いて、合わせて8名がおいでになることになっていた。
4年半前の、「最も苛酷な3泊4日」を思い出す。
4人の社長とは、いずれも初対面だと思っていたが、お一人、見たことのある顔の方がいらっしゃった。
…思い出した!
「ソメク論争」のときのキム支店長だ!いまは栄転してB社の本社に戻っているんだな。
のちにキム社長に「ソメク論争」のときのことをお話ししたら、ご本人は覚えていらっしゃらなかったが、
「あのとき、こちらが変わったことをしたおかげで、覚えていてくれたんだね」
とおっしゃった。
B社のユン社長とは、名刺を交換したときに
「ああ、鬼瓦さん!」
と、なぜか僕の名前を知っていた。
「あなた以前、韓国のK大学に留学していたでしょう」
「ええ。C先生のもとで勉強していました」
「私も、C先生の教え子ですよ」
「そうでしたか!」
いわば、兄弟弟子というわけである。
「先日、C先生にお会いしたら、あなたの話題が出てね」ほんとうに、世間は狭い。
4人の社長のうち、C社のペ社長が、ほかの3人の社長よりも格が上である。「要人」といってもいいランクの方である。そのせいもあってか、
風格もあり、威厳もあり、少々気難しそうな印象があった。
(うーむ、何か不手際があったら怒られそうだな…)
私は少し、緊張した。
もうお一方、P社のキム社長は、マイペースな感じの方だった。
僕を含めた4名の同僚は、韓国のVIPにぴったりとくっついて、そのつどいろいろな対応をしなければならない。
お昼のお弁当を配ったり、お茶を入れたり、式典会場に誘導したり、胸元に付ける徽章を忘れずにお渡ししたり、等々。VIPが不便に思われないようにありとあらゆることに対応するのである。
全体に段取りが悪く、VIPが手持ち無沙汰になる場面もしばしばあったのだが、それでも、なんとか間を持たせなければならない。
午後2時から始まった開幕式には、300人弱のお客さんがいらっしゃった。
祝辞を述べていただく主賓は、ホールの舞台上に設置された椅子に座っていただくことになっており、そこには、ペ社長とキム社長のお二人も含まれていた。
僕は舞台上にあがり、韓国のVIPの後ろに控えて、祝辞のタイミングを耳打ちしたりする役目だった。
ほんとうならば、日本側の主賓の祝辞も耳元で通訳しなければならないのだろうが、僕の韓国語能力ではとてもできないので諦めた。
結果的に、僕は舞台上でほとんど役に立たなかった。
(うーむ。これではなんのために俺は舞台上にあがったのかわからない)
うなだれて舞台を降りようとすると、ペ社長が
「お疲れさま、ありがとう」
と、肩を叩いてくれた。
開幕式が終わり、テープカットを経て、いよいよ内覧会である。
ここでの僕の役割は、ペ社長にピッタリとくっついて行動すること、である。
よりによって、いちばん格が上の、しかも威厳のあるペ社長を担当するというのは、荷が重い。
しかも、僕はほとんど通訳ができず、ただただ、ペ社長の近くにいるだけである。
この内覧会の時間が、1時間半ほどあり、なんとか手持ち無沙汰にならないように、いろいろと案内したのだが、それでも思うように説明ができず、ただただ、ペ社長の近くに控えているだけになってしまった。
ペ社長も、黙って、何もおっしゃらない。
(うーむ。ご機嫌を損ねてしまったかな)
と、ひどく落ち込んだ。
午後5時半から、立食形式のレセプションが始まり、そこでも、韓国のVIPにつかず離れず、といった感じで、1時間半が過ぎた。
午後7時過ぎ、レセプションが終わり、今度は2次会である。送迎バスで20分ほどかかる和食のお店に場所を移した。
この2次会は、うちの会長や社長、副社長といった幹部が、韓国のVIPを招待するという会で、僕は2次会の司会をすることになっていた。
会じたいは和やかに進んだが、このあたりになると、疲労がピークに達していて、僕の司会進行も、グダグダなものになってしまった。
午後10時、2次会はようやくお開きになった。
ああ、これでようやく今日の日程が終わった!
と、予約していたホテルに向かおうとしたら、ペ社長が、
「もう1軒行こう」
とおっしゃったので、急遽、チェーン店の居酒屋で3次会を設定することになった。
うちの会長、社長、副社長は帰り、日本側で残ったのは、僕を含めた、韓国VIP対応チームの4人である。僕ら4人は平社員なので、韓国のVIPのみなさんも、気兼ねなくお話しすることができたようだった。
(この宴、いつまで続くんだろう…)
と心配したが、日付が変わる頃になって、お開きになった。
最後に、ペ社長が、締めの挨拶をされた。
「ここにいる日本のチング(友人)たちの献身的な努力のおかげで、今日はとてもいい1日になった。これからも韓国と日本で交流を進めていきたい。みんな、このチングたちに拍手してくれ」
韓国のお客さんたちが、拍手をしてくれて、
「今度はソウルで会いましょう」
と口々に言ってくれた。
かくして、長い一日が終わった。
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