フラミンゴの奇跡
3月3日(日)
旅先での会合、1日目。
大学の研究室の先輩のOさんが会合にいらっしゃるとのことで、10数年ぶりにお目にかかった。
もう15年ほど前になるが、「前の職場」にいた頃、自分が主催する会合にOさんをお呼びしたことがある。僕にとってはとても恐い先輩だったが、Oさんは僕のことを何かと気にかけてくれていた。
「どうも、ご無沙汰しております」
と挨拶すると、
「体調のほうは大丈夫?なんかいろいろな人からひどく悪いと聞いて、心配していたよ」
とOさんはひどく深刻そうな表情で僕に言うので、
「ええ、この通り大丈夫です」
とお答えした。
先日も、別の会合で、別の知り合いに会ったときに、
「大丈夫なんですか?ひどくお悪いと聞いてましたけど」
と言われたのだが、いったい業界内でどんな噂が流れていたんだ?
まったく、業界の噂というのは、恐ろしい。
会合が終わり、会合の打ち上げには参加世ずに、古い仲間たちと食事をすることになった。
「この町の郊外にね、フラミンゴがいる洋食屋さんがあるんです」
「フラミンゴ?」
どうやらこの地方ではよく知られた老舗の洋食屋チェーンらしい。
行ってみると、ほんとうにフラミンゴがいた。剥製かと思ったら、生きているフラミンゴが何羽もいるではないか。
「T君も呼べばよかったですかね」
T君とは、卒業生のT君である。
「T君か、会いたいね。でも彼のことだから、明日の会合に来るんじゃないだろうか」明日が、会合の本番である。
話題が、僕の肋骨が折れた話に及んだ。
「肋骨が折れたんで、あんまり笑わしちゃいけないんだよね」
「そうですよ。まだ痛いんですから」
そう言いながら、周りは何かと笑わせにかかるのだが、僕はそれを注意深く受け流した。
食事が終わり、一段落していると、
「先生、お久しぶりです」
と声をかけてくる人がいる。
卒業生のT君ではないか!!!
新婚のT君は、奥さんと一緒にこのお店に食事に来ていたらしい。
「T君!なぜここに?」
「先生こそ、なぜここに?」
町のはずれにある、ちょっと変わった洋食屋さんなのである。ふつうはあまり、チョイスしないお店である。
「T君、このお店によく来るの?」
「いえ、初めてです」
なんと、初めて来たお店に、たまたま僕がいたというわけだ。
「さっき、君の噂をしていたところだよ」
「…ということは、ものまね歌合戦でいうところの『ご本人登場!』といった感じですか?」
「こんな偶然あるんだね」
「先生が立ち上がってフラミンゴを熱心に見ておられたので、もしやと思い声をかけたのです」
「フラミンゴのおかげか」
「『フラミンゴの奇跡』ですね」
「なんか、『ハドソン川の奇跡』みたいな言い方だな」
うひゃひゃひゃ、と、僕は自分のいったギャグに自分で笑ってしまった。
「痛い痛い痛い。肋骨が痛い」
すると、目の間にいたこぶぎさんが言った。
「せっかくいままで笑わずに過ごしていたのに、自分のいった言葉に自分で笑ってしまうんだから、世話ないね」
僕は肋骨のあたりを押さえながら笑い続けた。
「それに、そのギャグ、そんなに面白くないよ」
それでも僕は、この不思議な状況に、笑い続けたのだった。
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コメント
デジタル・フォーエバー!!
リブ・フォーエバー!!
会議の間、脳内で繰り返さないように。
投稿: アナコンダこぶぎ | 2019年3月 4日 (月) 10時25分