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幻の夏野菜スペシャル

4月20日(土)

娘がいま通っている保育園で、「栽培活動」なるものがあるというので、参加することにした。「栽培活動」とは、保育園が借りている市民農園の一角に、保育園の園児たちと保護者、そして保育士さんが一緒になって夏野菜を植えて、収穫したあかつきには、それをみんなで食べよう、という活動である。

言ってみれば、「シェフ大泉 夏野菜スペシャル」のような企画だな。

希望者は申し込んでくださいとあったので、申し込んだところ、たくさんの応募があったという。

「24のご家庭にご参加希望をいただき、ご両親、ごきょうだいのみなさまを合わせると60名の大所帯となり、面積的に全員がお入りいただけない状況が予想されます。各ご家庭、お子様と保護者の方お一人で参加いただきたく、ご協力をお願いいたします」

市民農園の一角に60名も集まったら、たしかにパニックになる。我が家では、僕が保護者代表として娘と参加することにした。

しかし僕は、この「栽培活動」に、かなり複雑な気持ちで参加することになった。

というのは、つい2日ほど前に、第一希望だった認可保育園の二次募集に、入園の内定をもらい、来月に転園することが決まったからである。

その認可保育園は、自宅の目の前にあって、ここに入園することが我々の悲願だった。しかし競争率が高く、昨年度、あっけなく落選してしまったのである

二次募集もある、と聞いていたが、1歳児クラスは募集が1名しかなく、二次募集もどうせ引っかからないだろうと諦めていたのである。聴くところでは、その1名の枠をめぐって、26名の申請者がいると言うことで、つまりは倍率が26倍というわけである。これでは受かる気がしない。

しかし諦めなかった。

以前にも述べたように、認可保育園に入る際には、さまざまな条件が点数化されていて、その点数に応じて、入園できるかどうかが決まる。4月に入ってから、その点数を上げるために、妻はさまざまな書類を抜かりなく作成して提出した。おそらくそれが、功を奏したものと思われる。持ち点が上がって、上位にくい込めたのだろう。

もう一つは、市役所に行って食い下がったことである。

一次募集に落ちたあと、市役所に行って、どうして自分たちは落ちたのかを聞きに行った。もちろん、そんなことを聞いたところでどうなるわけでもないのだが、何も意思表示をしないよりは、何らかの意思表示をした方が、あるいは審査の時に有利にはたらくのではないか、と思ったのである。

最終的には市役所の苦情受付係にまで行って、「保育園入園のための条件設定がおかしい」という意見を言った。おそらくクレーマーとして処理されたのかもしれないが、「声を上げなければ何も変わらない」という信念に賭けてみたのである。

もちろんそれが、二次募集の内定に直接結びついたとは思えないが、結果的には、内定をもらうことができたのである。

これはめちゃくちゃうれしいことなのだが、一方で、せっかく慣れてきたいまの保育園から転園しなければならないのは、ちょっと複雑な気持ちである。

そういう状況にある我が家が、「栽培活動」に参加してもよいものだろうか?

いまの保育園に在籍するのはあと1週間である。夏野菜が収穫される頃には、もうこの保育園にはいないのである。

自分で収穫できない野菜を植えても、テンションが上がるはずがない。

それに、「来月転園するのに、栽培活動に参加するのは、どういう了見だ?」と言われかねない。

では、いっそのこと参加しない方がいいだろうか?

それはそれで問題である。「あの家族、転園が決まったら手のひら返したようにこの保育園に対して冷たくなった」などと批判されるかもしれない。

ま、どっちでもいいことなんだが、気病みするタイプの僕は、こんなどうでもいいことに悩み続け、結果、参加することにしたのである。

午前10時少し前、指定された場所に行ったら驚いた。

猫の額ほどの広さの農園ではないか!

当然である。ふつうは、一つの家が家庭菜園として借りる区画を、保育園が借りているわけである。つまり、ふつうでいえば一家族分の広さの畑なのである。たしかに、とても60名もの人が参加できるような場所ではない。

結局は欠席した家族も多かったので、実際に集まったのは20名弱くらいだった。

しかし、やはり場違いだったかな、と思った。昨年から継続して来ている家族が多いせいか、顔見知り同士の家族がけっこういたのだ。当然僕は、参加者の家族を誰も知らないので、その人たちの輪に入っていくこともできない。

もう一つは、娘がまだ1歳になったばかりで、おそらく参加者の中で最年少なのだが、スコップを使うことも、水をまくこともできない、ということである。ほかの子どもたちは、スコップを自分で持って、土を掘ったり苗を植えたりできているのだが、うちの娘は、それがまったくできない。ただただ石をつかんだり、土をつかんだりして、その手で顔をこするものだから、あっという間に顔が真っ黒になってしまった。地べたに直接座ったりして、着ている服も真っ黒になってしまったのである。

娘が勝手気ままに動くものだから、こっちは苗を植えるどころではない。かろうじて、ゴーヤの苗を一つ植えただけで、「栽培活動」は終わってしまった。

栽培活動が一時間ほどで終わったあと、今度はその足で耳鼻科に寄り、娘の診察をしてもらって、帰宅したのがお昼である。

ただただ真っ黒になっただけで、何の達成感もないままに「栽培活動」から帰ってきたのだった。

午後、娘は文字通り「泥のようになって」昼寝していた。よっぽど疲れたのだろう。

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