さよなら、リーさん
4月19日(金)
職場の会議が4時前に終わるので、今日は職場をちょっと早めに出て散髪屋に向かった。
このブログで以前に述べているように、いま通っている散髪屋は、自宅の近くでも職場の近くでもない、実に中途半端な場所にある。ふだん通勤している電車の乗換駅などでもないのだ。つまり、降りる必然性のまったくない見知らぬ町の駅の駅前にある散髪屋に通っているのである。
なぜそんなことになってしまったかについては、すでにこのブログで述べたので省略。簡単にいえば、僕の髪を切ってもらっていたリーさんが、人事異動で別のお店に移ってしまったため、僕もそれに合わせてリーさんのいるお店に通い続けることにしたのだが、そのお店のある場所が、もはや自分とはまったく関係のない町だった、というお話。
職場の最寄りの駅から私鉄に乗り、ある駅で別の私鉄に乗り換える。あらかじめ時間を調べてみたら、予約していた5時半には十分に間に合うようだ。
というわけで、のんびりかまえて電車に乗っていると、5時を過ぎたあたりだろうか。車内アナウンスが流れた。
「たったいま、4時58分頃に○○駅で人身事故があったとの知らせが入りました。詳しい情報が入りましたらまたお知らせいたします」
○○駅、というのは、たしか、僕が降りることになっている駅の、2つ先の駅だった。
ほどなくして第2報がアナウンスされた。
「○○駅で人身事故が起こったため、この路線は当面運転を見合わせます。したがいましてこの電車は、○○○駅までで折り返します」
ええええぇぇぇぇっ!!!
○○○駅といったら、僕が降りる予定になっている駅の、ひとつ手前の駅ではないか!!!
ということは、散髪屋にたどり着けないではないか!!!
予約をしている5時半までに着ける見込みはなくなった。僕は散髪屋に電話した。
「すみません。電車が人身事故で、いま運転見合わせで、○○○○駅にたどり着けません。5時半に着けそうにないのですが、少し遅れても大丈夫ですか?」
「6時までにお着きになればなんとか大丈夫です。6時を過ぎますと他のお客様の予約が入っておりますので…」
「わかりました。なんとか頑張ってみます」
…とはいってみたものの、人身事故は相当深刻なものだったらしく、復旧する目処は立っていないようである。
ひとつ手前の○○○駅で放り出されてしまった僕は、途方に暮れてしまった。
(うーむ。どうしよう…)
こうなったら、タクシーを使って行くしかない!
○○○駅の改札を出てタクシー乗り場に行くと、すでにタクシー乗り場は長蛇の列だった。しばらく列に並んでみたが、タクシーが来る気配がない。
(こりゃあ、ダメだな)
あきらめてもう一度、○○○駅に戻り、改札のところで駅員さんに聞いてみた。
「あのう…、○○○○駅に行きたいんですけど…」
「○○○○駅ですね。代替手段はですねえ」と、駅員さんがなにやら調べはじめた。「この駅からJRに乗ってもらって、二つ目の駅で降りてもらえれば、そこから路線バスが出ています」
この時点でもう5時40分である。いまからJRに乗って二つ目の駅で降りて、そこからバスに乗っていくのは、かなり時間がかかることは、容易に予想できた。
「急いでるんですけど…」
「では、歩いて行くしかありませんね」
「時間はどのくらいかかりますか?」
「そうですねえ…。20分か30分はかかります」
この辺の地理をよくわかっていない僕が、歩いて20分で着けるとは思えない。
こういうのを「詰んだ」っていうの?つまりゲームオーバーである。
散髪屋さんに電話して、「すみません。6時に着けそうにありません」というと、「では別の日に予約を入れますか?」と聞かれた。そもそも僕は、忙しくて今日しか時間がとれないと思ったので、今日予約したのである。それが封じられたわけだから、現時点で別の候補日があるわけではないのだ。
「ちょっと考えてからまた電話します」
といって電話を切った。
さあ、どうしよう。すでに僕の頭は「散髪の頭」になってしまった。ほら、よくカレーを食べたいと思ったときに、「カレーの口」になるっていうでしょう。あれと同じ、もうどんな手を使ってでも散髪をしないと気が済まなくなっているのである。
この近くの散髪屋に、飛び込みで入ろうか、とも思ったが、さすがにそれは気が引けた。
そうだ!
ここからJRに乗って2つ目の駅は、かつて僕が通っていた散髪屋さんの最寄りの駅である。そこに行こう!
急いで電話をかけてみたが、今日はもう予約でいっぱいだとのことだった。
ま、冷静に考えてみると、予約していた店に行けなくなったからって、やけを起こして他の店に行くと、ロクなことはないのだ。
ここはいったん冷静に考えよう。
明日は土曜日で休みなので、この際、自宅の近くの散髪屋に行ってみるというのが、いちばん現実的な方法である。
スマホで探してみると、自宅から歩いて10分くらいのところに、よさげな散髪屋さんを見つけた。急いで電話すると、明日の土曜の午後の予約を取ることができたのであった。
もし明日行く散髪屋さんがよかったら、しばらくその店に通い続けることだろう。そうなるともう、リーさんのいるあのお店には、行くことはなくなるだろう。
さようなら、○○○○駅の散髪屋さん!さようなら、リーさん!
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