コンディションの悪すぎる時代
「みんな最近コンディション悪すぎ!俺もそうだけど」
とは、講談師の神田松之丞がラジオで最近よく言っている言葉である。
「コンディションが悪い」とは、ここでは「心が荒れている」といった意味である。
自分の尊敬する芸人が、おもにTwitterを使って、揉め事を起こしたり、他人の揉め事に首を突っ込んだりしているのを見て、「コンディションが悪い人たちばっかりだ」と、松之丞は嘆息している。名人と呼ばれる人たちなのだから、浮き世の些末な出来事なんかに首を突っ込まず、超然としていてくれればいいものを、Twitterとやらがあるばっかりに、しょうもないもめ事に巻き込まれたりすることを、歯がゆく思っているのである。
たしかに、Twitterができてから、それとは無縁だったはずの人たちも、揚げ足をとられたり、しょうもない揉め事に巻き込まれたりすることが頻繁に起こるようになった。超然としていたはずの人も、心をかき乱されずにはいられない状況になってしまったのである。
ただ、「一億総コンディションが悪い社会」になったのは、なにもTwitterのせいばかりではあるまい。
先日、こんな話を聞いた。
もう20年近く続いている団体がある。
その団体の発起人は4人で、その4人は、この20年の間、その団体のイベントの企画運営を行ってきた。
4人は、アラ還からアラ古希にかけてのベテランの人たちばかりで、社会的にも地位のある人たちばかりである。男性が3人に、女性が1人という構成。
その4人が最近、あるイベントを企画した。
そうしたところ、そのうちの1人(男性)が、4人のうちの1人(女性)を、そのイベントから排除した、というのである。「排除した」というのはつまり、そのイベントにかかわらせないようにした、という意味である。
そんな内輪もめの話、僕にとってはどうでもいいことなのだが、なぜその人が、その女性を排除したか、その理由を聞いてビックリした。
「その女性は、○年×月△日の飲み会の席で俺のことを『差別主義者』と言った。飲み会の席とは言え、断じて許すことはできない」
と、侮辱されたときの飲み会の日付まで覚えていて、それを絶縁状のごとく相手に叩きつけたというのである。
「差別主義者」などという酷いこと言われた気持ちは、お察ししないわけでもない。というか、アラ還のあなた、あなたも飲み会で、けっこう酷いこと言ってるの、俺は知ってるよ。
だからもう「どっちもどっち」の話なのである。
まあそのことを根に持つのは百歩譲って理解するとしても、20年も一緒にやってきたその女性を仲間はずれにしてイベントからはずすってのも、大人げないと思うぞ。個人の感情とそのイベントとは、まったく関係ないからね。そんなこと、一回り下の俺だってわかるぞ。
そしたら今度は、排除されたその女性が、自分を排除した人のイニシャルをあげて「女性排除だ!」とSNSで騒ぎだした。
「女性排除」というのとはちょっと違うと思うのだが。
この一連の騒動を見て思い出したのは、
「みんなコンディション悪すぎ!」
という松之丞の言葉だった。
アラ還とかアラ古希になってもなお、こんな中2病みたいな喧嘩をしなきゃならないの?
(ちなみに先日、韓国の友人に聞いたら、韓国でも「中2病」という言葉が使われているらしい。恐るべし「中2病」の影響力!)
しかもこの人たちは、社会的にも地位のある人たちだぜ。冷静に物事を判断できる大人として、これまで僕が仰ぎ見てきた人たちなのだ。
みんな、どうしちゃったんだろう。
こんな些末なことを気にして、わざわざブログに書いているこの僕も、同じ穴の狢で、コンディションが悪いのかもしれない。
聞くところによると、今年の5月1日から新しい時代が始まったらしい。俺は認めてないけど。
もし仮に、「新しい時代はどんな時代になりそうですか?」
と聞かれたら、
「コンディションの悪すぎる時代です」
と答えることにしよう。
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