通訳ダイエット
「サラリーマンあるある、いやあったら困る!」(その4)の前に。
韓国での出来事について、もう少しだけ書く。
今回訪問した機関のボスは、キャリア官僚の方で、どうやら数年間、この機関に出向している形になっているようである。いずれ本庁に戻り、出世するのだろう。
以前にも書いたと思うが、本当に優秀な官僚とは、頭脳明晰で、知識が豊富で、懐が深くて、人格者で、話が上手な人なのだということを、この方とお話しすると実感する。
今回の訪問では、先方が日本語通訳のスタッフを用意してくれた。僕が先方にお願いしたことでもあるのだが、僕が通訳だとなんともおぼつかなくて、せっかくのセミナーの内容を十分に理解できないまま終わることを恐れたためである。
通訳の方がいたおかげで、うちのボスもセミナーの内容を十分に理解できたようだった。
それだけでなく、セミナーの後の会食にも、その通訳の方がついてくれて、十分なコミュニケーションを取ることができた。
しかし、通訳の方は、訳すのに忙しくて、なかなか目の前の料理を口にするチャンスがない。
それを見かねた先方のボスが、
「通訳の方も、ちゃんと食べてくださいよ」
と何度もおっしゃった。
そこで、先方のボスは、通訳についてのエピソードを思い出したらしく、こんなエピソードを語ってくれた。
「頂上会談(首脳会談)などでの会食では、通訳は大変なようです。当然、食事をする暇なんかありませんからね。あらかじめ首脳より先に食事を済ませてから、会食の通訳に臨むそうです」
なるほど、そういうものか、と納得した。
「むかし、金泳三大統領の時に」と、先方のボスが話を続けた。
「金泳三大統領は、ジョギングが趣味で、外国からお客さんが来ると、朝、必ず一緒にジョギングをしたそうなんです」
「そうですか」
「で、大変なのは通訳ですよ。通訳も一緒にジョギングしなければならない」
「そうなりますね」
「金泳三大統領の側近の通訳の人の中に、100キロ以上の体重の巨漢がいたのですが、ジョギングしながら通訳したことが続いたおかげで、体重が20キロも落ちたそうです」
「なるほど、それは大変ですね」
「クリントン大統領が訪韓したときもやはり、朝は青瓦台(大統領官邸)の周りを一緒にジョギングをしたそうなんですが、そのとき通訳は、あらかじめジョギングコースにある植物の名前を、全部覚えたそうです」
なるほど、植物の話題が出ても、ちゃんと通訳できるようにということなのだろう。
「大統領の側近の通訳は、何人かいるのですが、みんなジョギングで鍛えられたそうです」
「そうでしょうね」
「ですからダイエットするには、大統領の通訳になることです」
と、先方のボスは、そのエピソードを締めくくった。
さすが、座持ちのよい方だなあと、僕は感心したのだが、なによりも大統領のエピソードを出すあたりは、さすがキャリア官僚ならではだなと、さらに感心したのである。
「金泳三大統領の側近の通訳が、外国の首脳との『ジョギング外交』につきあわされたおかげで、20キロのダイエットに成功した」というエピソードは、たぶんどの歴史書にも記されないだろうから、ここに書きとどめておく。
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コメント
金泳三大統領のジョギング好きは有名だったようで、写真が残っています。
それにしても隣で走っている人が体格いいけど、ダイエット通訳かなあ?
https://japanese.joins.com/article/article_photo.php?cid=146473&photo_seq=1
投稿: 隣のこぶぎ | 2019年5月25日 (土) 09時11分