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新・宗廟大祭の攻略法(メモ)

5月5日(日)

ソウルでは、毎年5月の第一日曜日に「宗廟大祭」が行われる。

「宗廟」とは、朝鮮王朝の歴代の王や王妃の位牌がまつられている場所である。1995年にユネスコ「世界文化遺産」に登録された。

この場所で年に一度行われる「宗廟大祭」は、朝鮮王朝の子孫が、歴代の王と王妃をまつる大規模な祭礼である。2001年にユネスコの「人類口伝および無形遺産傑作」に登載され、2008年には「世界遺産代表目録」に統合された。

僕は10年ぶりに宗廟大祭を見学した。

10年前とくらべて、大きく異なったところがいくつかあり、僕が以前に書いた「宗廟大祭の攻略法」は、ほとんど役に立たないものとなったことがわかった。

そこで、10年ぶりに見学した宗廟大祭での体験をもとに、改めて「宗廟大祭の攻略法」を書いてみることにする。ただし、時間がなくて文章が練れないので、メモ風にまとめることにする。

2019年5月5日(日)に行われた宗廟大祭のスケジュールは、以下のようになっている。

10時~12時 永寧殿での儀式
12時~13時 御駕行列
14時~16時30分 正殿での儀式

このうち、メインとなるのが午後2時から行われる正殿での儀式なのだが、宗廟大祭は午前中の永寧殿での儀式から見ることを強くおすすめする。この点は、10年前に抱いた印象と変わらない。

永寧殿での儀式は、あまり重要でない王族に対する祭祀だが、午後に行われる正殿行事と儀式次第はほぼ同じであり、しかも正殿よりも間近で儀式を見ることができる。正殿は、空間が広すぎて、どんな儀式が行われているかを細かく見ることが難しい。永寧殿での儀式をしっかりと見て、午後の正殿での儀式は午前の復習というつもりで見るのがよいだろう。

○宗廟への到着時刻

P5050008 宗廟大祭じたいは午前10時から始まるが、宗廟に入ることができるのが午前9時からである。できれば8時半頃までには宗廟の入口に到着したい。今回私は、8時45分くらいに宗廟の入口に到着したが、すでに多くの人が開門を待って並んでいた。永寧殿で最前列で見学するには、午前8時半頃に到着し、開門と同時に小走りで永寧殿に向かうのがよいだろう。

○神路は歩くな

P5050012 ただし、急いでいたとしても、石畳の道である神路の上を決して歩いてはいけない。10年前には、神路の両脇にアジュモニ(おばさん)が立っていて、神路を歩いている人を見つけたら注意していたのだが、今回はそうした監視役の人がいなかった。神路の上を歩いてはいけないという作法が定着したからだろうか。

○パンフレットを必ずもらうべし

パンフレットも、10年前とは大きく異なっていた。パンフレットは2種類ある。ひとつは、宗廟に入場したあとにもらうことのできる、カラー版の簡易パンフレットで、韓国語、中国語、日本語、英語版が揃っている。理想は、すべてもらうのが望ましいが、少なくとも、日本語版と韓国語版は入手しよう(日本語版での漢字表記が、稀に間違っていることがあるため、原点の韓国語版もあった方がよい)。カラー版で、日本語もあり便利なのだが、儀式の詳しい内容はほとんど書かれていないのが残念である。

このほかにもう一つ、当日は「宗廟大祭奉行委員会」が発行している『宗廟大祭 奉行』という冊子も、無料で配られている。モノクロ板だが、宗廟大祭についての詳細が書かれており、有益である。韓国版しかないのが残念だが、儀式の台本がおさめられており、しかもその部分は漢字表記なので、儀式の流れをつかむ上で必須のテキストである。

この『宗廟大祭 奉行』という冊子は、宗廟内では配布されておらず、入口の外にあるテントに置いてあるので、宗廟に入場する前にもらっておかなければならない。担当者の人に言えばもらえるので、必ずもらっておくこと。言わないともらえない。

なぜ、パンフレットが2種類になってしまったのか、よくわからないが、公式パンフレットは、カラー版の簡易なものの方で、『宗廟大祭 奉行』の冊子の方は、宗廟大祭奉行委員会が非公式に作成したもの、ということなのかもしれない。

○永寧殿に入ったら

P5050014 永寧殿で儀式を見るときは、いちばん前で見ることがおすすめであることは言うまでもない。それに加えて、座る位置については、やや工夫が必要である。

永寧殿の向かって左端には、大きなスクリーンがあり、永寧殿の中でどんな儀式を行っているかを、スクリーンを通して見ることができる。外からでは、建物の中でどのような儀式が行われているのかが見えないから、内部を映し出すスクリーンの映像が重要なのである。スクリーンが見えるところに座ることをおすすめする。

P5050017 ちなみに今回私は、前から2列目に座ることができたのだが、座った場所からは、ちょうど晋鼓と呼ばれる大きな太鼓が邪魔をして、スクリーンを見ることができなかった。

儀式の次第については、『宗廟大祭 奉行』に細かく書いてあるので、それを確認しながら儀式の様子を把握するのがよい。ちなみに永寧殿は、全部で16の神室があるが、最も重要な第一室が、真ん中の建物の四つある部屋のうちの、いちばん左である。第一室に注目して儀式を見ると効果的である。

○永寧殿での儀式が終わったら

永寧殿での儀式は、ほぼ時間どおりに12時に終わる。終わったらすぐに、午後の正殿行事を見るための列に並ぶことをおすすめする。すでに12時の時点で、多くの人が正殿行事を見るために並んでいるので、モタモタしていると、正殿に入ることができなくなる場合がある。

○御駕行列は見られるのか

P5050165 12時から13時まで行われる御駕行列は、その全部を見ることができない。だが、午後の正殿行事を見るために並んでいると、午後1時直前に、輿に乗った初献官(国王に相当する人)が、石畳の神路を通って正殿に向かう様子を見ることができる。このとき輿に乗っている人が、午後の正殿行事の初献官(国王)役の人なので、顔をよく覚えておくこと。

○昼食はどうすればいいか

昼食は、朝にあらかじめ買っておくこと。周辺に食堂はないし、あったとしても食べに行く時間がない。厳粛な儀式なので、屋台が出るということもない。あまり行儀がいい方法ではないが、正殿に入るために並んでいる時間に、立ったままで食事ができるように、パンのようなものを用意して、待ち時間に食べるしかない。

○暑さ対策

10年前もそうだったが、今回も、天気がよく、気温が上昇し、きわめて暑かった。日差しを遮るようなところもほとんどないので、熱中症対策をする必要がある。まず、帽子は必需品である。宗廟大祭の会場で、ペラペラのプラスチック(ほとんど紙のようなもの)で作られた組み立て式のサンバイザーが配られるが、気休め程度のものである。自分自身で日差しを遮るための帽子を用意することをおすすめする。

また、あらかじめ十分な水分も確保しておくことも重要である。宗廟の周辺にはお店がなく、宗廟に着いてから飲料水を買おうとしてもダメである。

○正殿に入ったら

午後1時から正殿に入場できる。あんまり後ろの方に並んでいると、入場制限がかかって中には入れなくなることもあるので、その意味でも早く並んでおくべきである。

10年前は、儀式と同一空間である石畳の壇のところも、一部観覧席となっていたのだが、いまは、石畳の壇のところは純粋な儀式空間となり、観覧席はその外側だけになってしまった。石畳の儀式空間は。プロレスのリングのように一段高くなっていて、その周囲は低くなっており、後ろに行くにしたがって階段状に高くなっていく。つまり、観覧席の最前列は、プロレスでいうところのリングの真下にあたる位置であり、儀式を見るにはちょっと不便なのである。

P5050204 どこの観覧席に座れるかは先着順で、一番高い位置にある後ろの座席から埋まっていく。儀式を見渡すには、高い位置から見るのがよいので、必然的にそうなる。私は運悪く、最前列の椅子に座ることになってしまった。

しかしあきらめることはない。儀式は2時間半の長丁場なので、途中で飽きちゃって帰る人も出てくる。後ろの席が空くのを見はからって、すかさず後ろに移動しよう。「リングの真下」で見ているのと、あるていど高い位置から見るのとでは、見える風景がまるで違うのだ。

あと、永寧殿と時と同様、正殿の向かって左側にスクリーンがあり、建物内部での儀式の様子を映したしてくれる。スクリーンが見える位置に座ることも気にかけておこう。

○正殿の儀式は時間がかかる

正殿の儀式はとても時間がかかる。なぜなら正殿はとても広いからである。しかも、最も重要な神室である第一室が、建物のいちばん西にあり、それにたいして第一室に奉仕する初献官(国王)は常に正殿の東側に控えている。つまり初献官は、東の端から西の端までゆっくりと移動しなければならない。さらに正殿には19の神室があり、それぞれの人たちの移動だけでも、かなりの時間がかかるのだ。

P5050178 その間、放送局の女性アナウンサーと有識者による、儀式解説がある。当然韓国語である。まるで儀式の副音声のような感じなので、人によっては、ちょっとウルサく感じるかも知れない。その点、午前の永寧殿での行事は、そうしたウルサい解説がない分、落ち着いて儀式を見ることができる。その意味でも、永寧殿での行事は必ず観覧すべきなのである。

○正殿行事が終わったら

16時半に正殿行事が終わったあと、正殿の各神室に近づいて、儀式の調度品などを見ることができる。10年前は、神室の中に入って、神様に捧げた祭物(さまざまな食べ物)を間近に見ることができたのだが、いまは神室の中に入ることができず、ただ外から眺めるだけである。この点は、非常に残念である。

流れ作業のように正殿の各神室を見ながら移動すると、必然的に正殿の東側の出口から出ることになる。運がよければ、このとき、祭物として捧げられた「モチ」のお裾分けにあずかることができるかも知れない。

ここまでで、午後5時である。午前9時から午後5時まで、ほとんど休むことなく宗廟大祭を見学することは、とても体力が必要なので、万全な体調で宗廟大祭にのぞまれたい。

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コメント

航空券もホテルも取れない最悪の10連休。

ならば宿などいらない。

家の布団を車に積み込むと、当てのない車中泊の旅に飛び出した。

鬼の行方は知らぬとて、奇しくも日曜日には、とある有名な儒学者の故郷を尋ねていた。

その名前を冠した道の駅は人で溢れていて、儒教が密かなブームなのかと思ったが、中国式庭園を抜けた先にある記念館の客は2名だけだった。

しかし、待ち構えていた熱い解説は閉館時刻を過ぎても終わらず、史料庫や図書室の様子まで見せてもらって、解放されたのが午後5時過ぎだった。

建物は大きくないが、ほとんど休むことなく解説が続くこの記念館を見学することは、とても体力が必要なので、万全な体調で見学にのぞまれたい。

OQさんはここに来たかっただろうな。というか、きっと来てるな。

この人の弟子の名前を韓国語でどう発音するか、相当悩んでいたから。

投稿: ここをキャンプ地にする(こぶぎ) | 2019年5月 7日 (火) 09時25分

なんと、同じ日に、こぶぎさんもOQさんをめぐる旅でしたか。

それにしても大きな湖のほとりまで、車を走らせたんですなあ。

投稿: onigawaragonzou | 2019年5月 8日 (水) 15時59分

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