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塩漬け

「塩漬け」って、業界用語なのかなあ。

今日は「塩漬け」をテーマにお話しをします。

「塩漬け」っていう言葉、どんなときに使っています?

「なんとなくネタはあるけど、原稿に仕上げるまでには至っていないので、少し寝かせておく」というのを「塩漬け」ということもあるらしいけど、僕が「塩漬け」と聞いて頭に浮かぶのは、「原稿を出したけれども、先方の事情で公刊されずにそのままになっている状態」という意味です。

僕は何度か経験があります。

韓国留学の前ですから、もう10年以上も前のことです。ある出版社から、原稿の依頼がありました。なんでも全10巻くらいの大型シリーズを刊行するとかで、その中の最後の巻で、2万字くらいの原稿を書いてほしい、とのことでした。依頼をしてきたのは、編集委員のAさんBさんで、その業界の重鎮の方でした。

ラインナップをみると、1巻あたり15人くらいが書くとして、総勢150人くらいがこのシリーズにかかわることになります。筆の速い人もいれば遅い人もいるから、原稿を集めるだけでも大変だろうな、と思いました。

僕はその頃まだ30代で若かったこともあり、迷惑をかけてはいけないと、締切を守って原稿を出しました。テーマが難しかったので、かなり苦労をして書いた記憶があります。

僕のまわりには、何人か、そのシリーズにかかわっている人たちがいて、なかには同じ巻に執筆する人もいました。「原稿を出しましたか?」と聞くと、「まだ書いていない」と返事をする人が何人かいて、「はたしてこのシリーズ、最後まで本当に出るのだろうか?」と不安になりました。

数年後、ようやく第1巻が出て、「ようやく動き出した」と安堵しました。ところが、それ以降、数巻が刊行されたものの、その後はパッタリと出なくなり、僕が原稿を書いた最終巻は、校正すら出てこなかったのです。

そうこうするうちに10年がたち、僕の不安は的中しました。その会社が倒産し、そのシリーズは中止になってしまったのです。当然僕の書いた原稿も、塩漬けになったまま、日の目を見ることはなくなったのです。

編集委員のAさんとBさんから、執筆者全員に手紙が来ました。「せっかく原稿をいただいたのに刊行できなかったことは、編集委員の不徳のいたすところである。もし原稿を他の媒体で発表することを希望する方は、できるだけ後押ししたい」といった内容でした。僕は、もう10年以上も前に書いた原稿を、いまさら別の媒体に発表するつもりもなかったので、とくにそれに応えることはしませんでした。

さて、時間が前後しますが、その出版社が倒産する前、まだ僕の書いた最終巻が出るか出ないかもわからないときに、今度は別の出版社が、全6巻のシリーズを企画して、執筆依頼が来ました。編集委員は、またしてもAさんとBさんです。執筆者数は、おそらく総勢100人近くはいたでしょう。

(新企画を立ち上げるよりも前に、前の企画の後始末をしろよ!)

と思いながらも、とりあえず執筆依頼を承諾することにしました。僕が書くのは、最終巻の第6巻です。ただし、前回のように締切を守るのはバカバカしいから、今回は原稿の督促が来たら書き始めよう、と思いました。締切が過ぎても、2年くらい原稿を書かずにいたのです。そしてその間に、例の出版社の倒産の知らせを聞いたのでした。

どうせまた出ないんだろう、と思っていたら、昨年春、1巻と2巻が立て続けに出ました。

「残る巻も立て続けに出したいので、早く原稿をください」

と、出版社から督促が来たので、僕は慌てて書き始め、昨年の夏の終わりに、ようやく原稿を出しました。やはり2万字くらいの分量です。

ところが、1巻2巻と立て続けに出たのに対し、3巻以降はパッタリと出なくなりました。最終巻の校正も、待てど暮らせど出てこない。やはり塩漬けにされてしまったのです。

編集委員がAさんとBさん、という時点で、気づくべきでした。彼らは、出版社に新しい企画を持ち込んでは、最後まで責任を取らずに、うやむやに終わらせてしまうのです。原稿を出してから1年近くたっていますが、まだ第3巻は出ていません。このままでは、また同じ轍を踏むのではないかと、不安がよぎります。「絶対に本を出しますから」といって原稿を集め、結果的にその本が出ない、ということは、詐欺の被害に遭うことと、どこがどう違うのでしょう。

このほかにも「塩漬け」になっている原稿がいくつかあるのですが、日の目を見る目処は立っていません。いつか、塩漬けになった原稿をまとめて1冊の本にしようかな、と考えたりしています。

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