はたらく
最近、よく耳にするようになったと思うのだが、
「『働く』の語源は、『傍(はた)を楽にする』から来ている」
という言説。で、これを言った後に、
「働くということは、周囲を楽にするという意味があるのだから、周りの人を楽にするという気持ちで働けば、働く意欲もわいてきますよ」
と続く。
こんなことを言う人が、最近増えているような気がする。もちろん、これを語源とするのは誤りである。
ここではっきりさせておきたいのは、「働くというのは、傍を楽にするということ」と言ったのは、僕の知る限り、池田勇人首相(在任期間1960~1964)が初めてである、ということである。
池田勇人首相は在任中、何かの挨拶の時に、
「みなさん、働きましょう。働くというのは、傍(はた)にいる人たちを楽にするということなのです。働きましょう」
と国民に語りかけていたことを、子どもの頃にテレビで見たことがある。もっとも、僕はその頃生まれていないから、過去を振り返る番組か何かで、その場面を見たのである。
なぜ覚えているかというと、「首相なのに、校長先生の訓話みたいなことを言う人だな」と、不思議に思ったからである。
その前から、「傍を楽にする」という語呂合わせ自体はあったのかも知れないが、これを広めたのが池田勇人首相であることは間違いないだろう。
所得倍増計画とか、高度経済成長とか、そういう時代にさしかかっていたから、この言葉は、そういう時代にマッチした言葉として、重宝されたのかも知れない。この言葉には、解釈次第では、自己犠牲こそが働くということである、という意味が含まれている。
しばらくこの言葉を聞かなかったが、最近になってまた、この言葉がどこからか聞こえてくるようになってきた。気のせいか?
いずれにしても、「傍を楽にする」という言説を口にする人が、どのようなタイプの人なのか、些細なことだが、注意しておく必要がある。
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コメント
そもそも「働」自体が和製漢字なわけで、中国では単に「動」。
なのにニンベン足しちゃうという日本人。
傍を楽にというのは語源というよりこじつけでしょうが、いかにも高度経済成長期に好かれそうな感じ。
和製漢字って個人的にセンス抜群なものが多いと思うんですが、マンパワー至上主義の管理職が旗振りする働き方改革に心身やられっぱなしの私には「躾」という和製漢字も闇を感じてなりません。
投稿: 江戸川 | 2019年7月 2日 (火) 19時18分
あまりにも書くことがなくて、申し訳ないくらいどーでもいい内容のことを書いてしまったのだが、江戸川君がコメントでいい感じで膨らませてくれたおかげで、この記事は削除せずにすみました。ありがとう。
コメントの内容には、まったく同感です。
投稿: onigawaragonzou | 2019年7月 2日 (火) 23時17分