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俺たちはどう生きるか

僕が憧れる「ダメな大人」は、大竹まことである。これは、以前にも書いたことがある

古稀を過ぎた大竹まことは、ますますポンコツぶりに磨きがかかっている。たまに文化放送の「ゴールデンラジオ」を聴くが、お世辞にも流暢な進行とはいえない。適切な言葉が出てこないこともしばしばである。

しかし、弱い者やダメな人間への優しいまなざし、差別への怒りという点だけは、まったくぶれていない。

大竹まことが、久しぶりに本を出したことを知り、読んだ。僕にとっては、『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』以来の待望のエッセイ集である。

『俺たちはどう生きるか』(集英社新書、2019年)。若者に向けて書いた連載の文章を一冊にまとめたもののようであるが、実際には、僕のような「ポンコツ予備軍」にこそふさわしい本である。

病気や死にまつわる内容が、前著よりも多い気がする。たぶん本人にとってそれが最も実感されることだからだろう。

いくつか紹介する。

「この番組(注:「大竹まこと ゴールデンラジオ」)に封書が届いた。開くと、点字であった。点字の横に、美しい文字の日本語があり、誰かが訳したことがわかる。

毎日は聴けないが、この番組が好きで聴ける日は聴いてくださっているという全盲の七〇歳の妻と、同じ全盲の七一歳の夫からの手紙である。

特に、月曜日の女性の声と、金曜日の女性の声が気に入っているそうである。

点字の最後に、

『私たちは幸せです』とあった」(「花水木」)

「人にはみな寿命があるのだろう。与えられた命、自ら絶つような真似はしてはならない。歌手の山崎ハコは大病を患い、生死の境をさまよった。

そのことを私に告げ、なおも言葉をつないだ。

『大竹さん、知ってる、朝起きるとね、息をしているの。大竹さん、人間は息をしてるだけで、楽しいのヨ』」(「官僚たちの矜持」)

「Aさんは病気療養中で、かなり前から仕事を休んでいる。死んでしまいたくなって、最後に神様に尋ねたそうだ。

『神様、私はどうしたら良いのでしょう』

その時、それに答えるようにベランダの外から、カラスが『カアーカアーカアー』と鳴いた。その間の抜けた声に死ぬのをやめたと書いてきた。

カラスが鳴いたら、何事も一端中止すべきである」(「カラスが鳴いたら」)

前回に書いた「病院ラジオ」の話と、妙にシンクロした内容である。

シティーボーイズのコントも、久しぶりに見てみたくなった。

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