ゴロウ君との再会
9月11日(水)
1か月半ぶりくらいの出張である。新幹線に乗って西に向かう。
12月にこの地でおこなうイベントのための打ち合わせをする必要があったので、急遽決まった出張である。打ち合わせも無事に終了し、やはり来てよかったと思った。
出張でかなり疲れが出たのか、久しぶりに両足の裏が痛み出し、夕方になるにつれて歩くのが億劫になった。たぶん、再開した薬のせいであろう。翌日は早めに帰ることにした。
さて翌日。「新幹線の停まる駅」の自動券売機のところで、帰りの新幹線の切符を買おうとしていると、後ろから、
「鬼瓦君じゃね?」
という声がした。
振り返ると、どこかで見たような顔。
高校時代に同じクラスだった、ゴロウ君だ!
以前にも書いたと思うが、僕は、高校時代のクラスの有志によるグループLINE、というものに参加している。もとは、クラスの中でも、テニス部とかバスケ部とか、運動部系の人たちが中心に集まっているグループなのだが、文化系の僕も、連絡がついたという理由で、なぜかこのグループLINEに参加することになった。高校当時は、クラスの中でも運動部系の人たちが「1軍」、つまりイケてる人たちで、僕は「2軍」か「3軍」くらいの位置だったので、1軍の人たちとほとんどお話しするような機会はなかった。彼らは数か月に1回、LINEで連絡をとりあって有志で飲みに行ってるみたいだけども、僕は参加したことがない。
ゴロウ君は、そのグループLINEの幹事役で、飲み会の企画やらお店の選定は、すべて彼が仕切っていた。高校時代はテニス部に所属していて、根っからの人のよさから、高校時代からみんなに頼られる存在だった。
そのゴロウ君が、僕に気づいたのである。
「ど、どうしてここに?」
「ここに勤めているんだよ。鬼瓦君は?」
「これから帰るんだ」
そうだった。ゴロウ君は鉄道会社につとめていて、今年からこの地に転勤したのだと聞いた。これから会社に行くといった感じだった。
それにしても、乗降客がとても多いこの駅の雑踏の中で、よくもまあ僕を見つけたものだ。この駅は、新幹線と在来線が集まる駅で、通勤時間帯は激しく混雑するのである。
しかも、お互い、高校時代からくらべて、かなり太ったのである。それにかなりオッサンになっている。僕もそうだが、ゴロウ君も僕に負けず劣らず、くたびれたオジサンになっている。ここ最近、LINEでは近況を聞いているが、実際に会うのは、10年ぶりくらいなのである。
僕に気づいた、ということは、俺はあんまり変わっていないということなのか?
それはともかく。
むかし読んだ、松本清張の『内海の輪』という小説で、やましいことをしている主人公が、伊丹空港で偶然知り合いに会い、自分のしているやましいことがバレないかドキドキする、というくだりがあったと記憶している。その場面を読んだとき、
(そんな、偶然に空港の雑踏の中で知り合いに会うなどというご都合主義的な展開なんか、あるかよ!)
と思ったものだが、実際にあるんだね、こういうことが。まったく、自分の引きの強さには呆れるばかりである。
帰ってからグループLINEに投稿したところ、ゴロウ君がメッセージをよこしていた。
「今日は、かなりぼぉーっとして歩いていたのですが、たまたま目の前の人が切符を買うのを見ていたら、誰かに似てるな、と思って、さらに見ていたら鬼瓦君かな?と気づきました。
鬼瓦君かどうか確信がなかったので、じつはちょっと自動販売機に立ってチラ見にして、鬼瓦君であることを確認。最後に背後に立って小声で「鬼瓦君じゃね?」とつぶやきました。まさか、本当に鬼瓦君だったとは半信半疑だったのでびっくりしました。
その後はあまりにも想定外だったので、喋ることが浮かばずにゴニョゴニョ喋って立ち去ってしまいました。鬼瓦君、すいません」
たしかに、あのときはあまりに突然に会ったために、お互い、何を喋っていいかわからなかった。
突然に再会したときなんて、そんなものなのだろう。
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