俺以外全員ブラタモリ
たまに思い出したように、NHKの「ブラタモリ」という番組を見ることがある。「ブラタモリ」とは、タレントのタモリが、日本のいろいろな場所を巡るという旅番組である。「笑っていいとも」を引退してから、日本全国を行脚する番組を始めたタモリは、さながら伊能忠敬である。
そのとき、地元の人、あるいはその地元にゆかりの深い人が出てきて、タモリにいろいろと説明をするのだが、たまたまテレビをつけたら「ブラタモリ」をやっていた、というくらいの頻度で「ブラタモリ」を見ると、たいてい、僕の知り合いが地元の案内人として出演しているのである。
大学の先輩だったり、後輩だったり、仕事仲間だったり、会議などでご一緒したことがある人だったり。
もし毎回欠かさず見ていたとしたら、そうとうな数の僕の知り合いがタモリと会っている、ということになるだろう。
それだけではない。
高校時代の吹奏楽部の、同じサックスパートだった後輩に、アサカワというやつがいるのだが、アサカワは大学進学後、「ダンモ」といわれる「モダンジャズ研究会」に入り、ジャーマネ(マネージャー)をつとめたそうだ。
そのダンモは、歴史と伝統のあるサークルで、大大大大先輩に、タモリがいるという。タモリも、ジャーマネをつとめていた。
で、定期的に、歴代のジャーマネが集まる同窓会みたいなものがあるそうで、僕の後輩のアサカワは、そこでタモリとツーショットの写真を撮ったり、ちょっとしたセッションをしたり、なんてことがあるそうだ。
つまり高校時代の後輩も、タモリと面識があるというのである。もはやタモリは、「めったに会えないタレント」ではない。むしろ「最も会うチャンスのあるタレント」である。
しかしながら、おそらく僕にはその機会は、永遠に訪れないだろう。僕のまわりの知り合いだけが、これからもタモリと一緒に仕事をするのだろう。
むかし筒井康隆が、小松左京の『日本沈没』のパロディーとして『日本以外全部沈没』という小説を書いたが、それに倣えば、「俺以外全員ブラタモリ」という現象であるといっても過言ではない。
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